国家間の戦争において、勝利を目前にして非業の死を遂げた父王の跡を継いだ幼い女王、フィルガレーデ。そのことを不安視した宰相らの策により、敵国の王子と婚姻を結んで、休戦を持ちかけることとなりました。
敵国は幼い女王を侮り、和平の証として送られたのは、倍以上の年嵩であるワケありの第四王子、ザイワン。釣り合わない二人による、不器用な愛の物語がそこにありました。
歳の差恋愛というテーマに対して、「大人が子どもに手を出す不道徳」を決して魅力的なものとしては描きたくなかったというのは、作者様の談。固く冷たい文章を心がけられたとのことであり、一歩引いた距離から生々しい心情を描写することで、二人の関係をより美しいものにしているのだと感じました。
それだけに、最後のあの言葉は心にぐっと来るものがありました。
基本的にフィルガレーデの視点で物語は進行するのですが、ザイワンの思いを意識して読み直してみると、二人のすれ違いぶりが際立ち、よりその言葉の破壊力が増すように思いました。
魅力が十二分にありながら、文字数は少なめで読みやすさもあり、ぜひ何度か読んでいただきたい作品になっていると思います。
作者さんは溺愛作品が苦手らしく、自分と通じるところがあったので、興味を持って拝読させて頂きました。
私は、硬い文章だと感じることなく、テンポ良く読み進めることが出来ました。
最後の2話を読んでいる時、なんともいえない不思議な感情が、私の心を震わせました。
胸が詰まり、涙が零れそうになる。……でもそれがなぜなのか、上手く言葉で説明することはできません。ですが、こちらの作品が、私の琴線に触れたのです。
最後の終わり方は素敵でしたが、私はそこに至るまでの情景描写や心理描写に心を揺さぶられました。
短いお話でしたが、その短さの中に高密度の内容が詰まっていて、読みごたえがありました。
読了後は、ちょっとセンチな気分になる……そんな素敵な作品です。