格調高い文体でつづられた、不器用な二人の愛の物語

国家間の戦争において、勝利を目前にして非業の死を遂げた父王の跡を継いだ幼い女王、フィルガレーデ。そのことを不安視した宰相らの策により、敵国の王子と婚姻を結んで、休戦を持ちかけることとなりました。

敵国は幼い女王を侮り、和平の証として送られた、倍以上の年嵩であるワケありの第四王子、ザイワン。釣り合わない二人による、不器用な愛の物語がそこにありました。

歳の差恋愛というテーマに対して、「大人が子どもに手を出す不道徳」を決して魅力的なものとしては描きたくなかったというのは、作者様の談。固く冷たい文章を心がけられたとのことで、一歩引いた距離から生々しい心情を描写することで、二人の関係をより美しいものにしているのだと感じました。

それだけに、最後のあの言葉は心にぐっと来るものがありました。

基本的にフィルガレーデの視点で物語は進行するのですが、ザイワンの思いを意識して読み直してみると、二人のすれ違いぶりが際立ち、よりその言葉の破壊力が増すように思いました。

魅力が十二分にありながら、文字数は少なめで読みやすさもあり、ぜひ何度か読んでいただきたい作品になっていると思います。

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