直視してください。眼前の光景に狼狽えないで。

キャッチコピーにて猫の目が人の心を読んでいるという話を語る、本作は……

目を塞ぎたくなりますよ。いや、失礼しました。視線は吸い寄せられて物語の先へと進みます。しかし凄惨さたるや。

それも、出来事だけでなく、人の心において。黒く染まった心は見るにおぞましいものです。そして、それは当人にとっても。自身の心中を見ていないのは、実はおぞましさがうっすら見えていて目を塞いだのでしょうか。これ以上は評者は語りません。

その姿を凝視し続けたのは主人公の鏡堂でした。キャッチコピーでは見られる側だった彼は、作中で犯人の心中を凝視し続けます。主人公が目を塞がなかったからこそ、本作は結末まで語られました。その鏡堂とバディを組んだ天宮も、可愛く見えて芯が強く、振り回されるどころか時には振り回すことも。彼女でないと鏡堂にはついていけません。

明暗の対比が激しいところに入ると人の目は周囲がはっきりと見えなくなるのですが、本作は最後まで明瞭に見えるのです。それはひとえに作者の力量です。

その他のおすすめレビュー

村乃枯草さんの他のおすすめレビュー306