甘く芳醇に香るのは、バターの香りと、かけがえのない二人の間の空気感

二人の間に流れる空気感が好きです。
ハイネはバターの香りをまとっていると表現されていますが、私はこの作品を読んでいてその香りを、カレンとハイネの間に流れる空気感にこそ感じます。
甘くて芳醇でコクがあって、ほんの少しのもたれるような濃さと、食べすぎたらいけない罪深い風味があるような感じ。
この作品に百合やそれに類するタグは振られていませんが、私がそういった作品を読むときに求める風味が、この作品にもあるように感じます。

お話について。
物語の構造はシンプルです。幽霊のハイネと一緒に、深夜にお菓子作りをするお話。その繰り返しです。
その繰り返しの中で、二人の仲と、幽霊となったハイネの背景が深掘りされていきます。
そして繰り返される日々は、いつか来るのであろう別れの時へのさみしさもただよわせて。
ハイネが幽霊でいるわけと、この二人のお菓子作りがどのような着地を迎えるのか、最後まで追いたいと思います。