★『平安助産師の鬼祓い』発売記念★ 木之咲若菜氏インタビュー

2024年7月12日に富士見L文庫より刊行される『平安助産師の鬼祓い』。

第6回富士見ノベル大賞で〈入選〉を受賞した作品です。


本作の発売を記念して、著者の木之咲若菜さんにお話をうかがいました。

裏側を知ることで、いっそう作品が楽しめること間違いなしです。

最後には、富士見ノベル大賞の応募を考えている皆さんへのメッセージも!

作家デビューを目ざす方にとっても必見の内容となっておりますので、ぜひ最後までお楽しみください。


書影

イラスト:セカイメグル


◆ ◆ ◆ ◆ ◆


――刊行される作品はどんなお話ですか。


 平安時代を舞台に助産師として働く女性のお話です。平安ですが、助産師という職業が陰陽師や医師くすしと同様、正式な役職として存在している世界観です。主人公・蓮花は鬼が視える体質で、出産の際に現れた鬼を、後に有名な陰陽師となる安倍晴明の協力を得て祓うところから物語は始まります。そして帝の后の出産を介助するよう抜擢され、さらに鬼を操る謎の術者まで現れて…という感じで権謀に巻き込まれていきます。


 助産師の仕事を通して喜びや自身の過去とも向き合いながら、産まれる命を守るために奮闘する物語です。

平安時代で助産師が主人公の話は珍しいと思うので、ぜひ楽しんで読んでもらえたらいいなと思っております!


◆ ◆ ◆ ◆ ◆


――どんなきっかけで作品を思いつきましたか。


 以前に看護師が主人公とした医療もののお話を書いたことがあり、次の作品を考える時に、そもそも日本の歴史ではどの時代から活躍していたのだろう?と調べたのがきっかけでした。古くには奈良時代に女医にょいという、今でいう看護師や助産師の仕事をしている人たちがいたことを知りました。そこにかつては病気の概念が、病気=鬼や物の怪の仕業と考えられていたことを思い出し、鬼の視える助産師の話を書こうと思いました。平安時代を選んだのは、私の好きな時代であり、陰陽師ものも好きなのでその組合せでいきたい!と思ったことが大きいです。


 この時代には助産師という名称はまだ存在していなかったのですが、テーマからずれないよう純粋にわかりやすいこと、そして陰陽師や医師もいるのなら助産師という名称があっても良いのではないかと思い、堂々と使うことにしました。

『平安助産師の鬼祓い』というタイトルは、私としてもわかりやすいので気に入っています。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆


――作品内のお気に入りのキャラクターとその理由を教えてください。


 どのキャラクターも好きなので一人一人語りたくなってしまいますね。

 特に主人公の蓮花は格好良くて、私自身とても尊敬する存在です。当時の出産は今以上に命懸けで、本当に大変な仕事だと思います。都を駆け回って、一人一人の妊婦さんに寄り添って出産を介助する。そんな一生懸命で芯の強い女性なのですが、晴明といると所々抜けていたり、隙があったりとそんなところも可愛いなと思っています。


 敵キャラの謎の術者も気に入っています。平安キャラの中でも異端なので、描写もあまり時代の規範に捉われずに書きました。彼の事情や主人公たちへの言動は書いていて楽しかったです。展開に悩んでいた時に、彼のおかげで話が大きく動いたので、存在にとても感謝しています。


 他のキャラもそれぞれ愛おしいので、またどこかの機会でお話しさせて頂けたらいいな、と思っています。


キャラ紹介

イラスト:セカイメグル


◆ ◆ ◆ ◆ ◆


――賞への投稿時、作品を書くにあたってどんなことを大事にしましたか。


 実は前年も富士見ノベル大賞に応募しておりまして、その経験を次に生かせるようにホームページに記載されていた総評を何度も読み込みました。そして主人公が誰なのかということを特に意識しながら、作品に取り組みました。主人公が主軸になるように気を付け、視点のブレなどを出来る限りなくし、読みやすくなるよう心掛けました。おかげで、主人公である蓮花の良さが出る作品になったと思います。


 さらに助産師を題材とした作品なので、出産の場面は特に熱を込めて書こう!と意識しました。今でもその場面を読み返すと、蓮花と一緒に働いていたかのようにクタクタになってしまいます(笑)


◆ ◆ ◆ ◆ ◆


――富士見ノベル大賞に応募したきっかけを教えてください。


 本屋に並べられた素敵な表紙と心温まるお話に惹かれたのが、富士見L文庫さまの書籍を知ったきっかけでした。ただ美しいだけではなく、作品から醸し出される優しさや温かさに心惹かれたのかなと、今振り返ると思います。


 そして本には富士見ノベル大賞の応募が記載されており、今後、自分がどんな作品を書きたいかということをイメージした時に、いつか本を出すならここがいいなと強く思いました。なので夢が叶ったこと、本当に嬉しく思っています!


◆ ◆ ◆ ◆ ◆


――応募が完了したときや受賞の連絡を受けたときのお気持ちを教えてください。


 執筆中は諦めそうになったり、怠けてしまいそうになったりする自分自身との闘いでもありました。『自分が自分を信じないでどうする!』と言い聞かせながら書いていたので、応募完了時は『自分の弱さに負けずに頑張れた!』という清々しい気持ちでした。一方でこのお話を書くこと自体は楽しかったので、ここで終わりになるのが寂しくて、出来ればこの作品のキャラたちともう一度会いたい、と願っていました。


 受賞は電話で教えて頂きました。「今回の選考結果ですが」と言われた瞬間、脳が反射的にショックを和らげようとしたのか『落ちたかもしれない』と頭によぎりました。だから直後に「入選しました」と言って頂けた時は信じられなかったです。その時に返答として「去年が惜しい結果だったので、より嬉しい気持ちが強いです」とお伝えしたところ、去年よりも良くなっていたと選考会でも言ってもらえていたことを教えて頂き、それが何よりも嬉しかったです。努力を評価してもらえたんだと感じることが出来ました。そして作品のキャラたちと再会出来ることも本当に嬉しかったです。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆


――改稿の過程や編集との打ち合わせの中で印象に残っていることはありますか。


 締切直前まで練り直した改稿箇所を、担当編集さんにお褒め頂いた時が特に嬉しかったです。またご指摘はなかったけれど、自分の中でこれで大丈夫だろうかと悩んでいた台詞があり、ご相談をさせて頂いたことがありました。すると編集さんにその台詞の『ここが良い』という理由を熱意も含めて伝えて下さりました。おかげで自信をもってこの台詞でいこう!と思えました。


 編集さんは良い部分やアドバイスを言葉にして伝えて下さるのが本当に上手くて、コメントを頂くと何度も読み込んでしまいます。そのたびに、ここまで思いを汲んで読み取ってもらえたんだ!と驚きと感謝の気持ちでいっぱいになりました。本当にありがとうございました!


コメント

担当編集コメント


◆ ◆ ◆ ◆ ◆


――これからどんな作品を書いてみたいですか。


 色々な世界観や時代のお話を書きたいです。今回の平安時代や助産という題材も、小説として書くのは初の試みだったのですが、調べながら書くのはとても楽しかったですし、自分の作品の幅も広がったと感じております。文章もまだまだ上手くなりたいですし、もっと成長したいと思っているので、しっかり初心を忘れないで書き続けたいです。


 そして自分の書いた話やキャラが、誰かの心に寄り添うことが出来たら、と思っております。私自身もたくさんの本や作品、キャラに心を支えられてきました。どうか私の書いた作品が一人でも誰かの心に届くことを願っています。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆


――これから富士見ノベル大賞に応募しようとしている方へのメッセージをお願いいたします。


 私は小説を書きたい気持ちがあるのに、なかなか進められなかったので、賞を目指したのは大きな一歩でした。書き上げるのは大変でしたが、目標を持って頑張れたことは本当に良かったと思っています。賞の存在は、書く上で大きな励みになりました。また自分と同じように頑張っている人たちがたくさんいる、ということもモチベーションになりました。


 一つの話を書き上げるだけでもとても大変なことなので、物語を書く方々を本当に尊敬していますし、心から応援しています。また、諦めずに続けることがとても大切で、こちらの賞はそういった頑張りにも気付いて下さっている、ということを私自身の経験からお伝えさせて下さい。


 そうして生み出された作品と共に、一緒に本を並べて出すことが出来たら幸せだなと思っております。その時はどうぞよろしくお願い致します。私も精進して、より良い作品を書けるよう頑張ります!


写真



気になった方はぜひ書籍を手に取ってみてください!


▼書籍詳細はこちらから▼

https://bookwalker.jp/defc63d59b-6ef4-46d8-ad67-e3eaa0cb5dff/

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

平安助産師の鬼祓い 木之咲若菜/富士見L文庫 @lbunko

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ