露悪と実の悪。そして少年の恋。

光と影。それは永遠に続く対立の構図で多くの物語が紡がれてきました。本作もそれに連なります。

構図を示すために序盤で描かれる影サイドは、粋がって格好つけたところがあります。これには、露悪、という言葉があります。見せびらかす悪。

しかし実の悪は隠されるもの。それはいかなるものか。読み進めていくと目を覆いたくなるものを見ます。でも、見るのですよ、世界の実相を。

世界と戦う姿は壮絶です。脳内麻薬をドバドバ放出していないとやってられない、そんなハイな気分を味わえることを請け負います。

それでも。

作品の基調は少年の恋。紹介に、不器用、とあるように、女性を口説く手管を知らず、自らの衝動を抑える術も持たず、それでも相手を慮って自らの危険をいとわない、そんな青い恋です。

世界の実相が闇そのものである中で、善も悪もなく不器用に相手を想う恋が清涼な風をもたらす、そのような物語です。そして、それもまた本作が描く対立の一つです。

異質なもののサンドイッチ、どうぞ召し上がれ。

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