第10話 夜風の中のお医者さん
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「蒼(あおい)くん、この島は居つくの?」
奥さんは、夜風の染みる時刻に家の外に出た。黄昏れている「先生」に声をかける。
「歌帆(うたほ)。お前と、お腹の子にさわるから、外に出るなって言ったのに」
先生は優しい目をして言うと、一緒に家の中に帰る。
「昼間来た子、昔のわたしに似てたね」
「そうか。昔のお前はもっと、ぶすくれた嫌な女子だったぞ」
「そう言えば、蒼くんは『英語の先生』には結局ならなかったね」
「歌帆も、高校の時、朝のお勤めしてた割には、あっさり、巫女さんの職務、投げ出したよなー」
「絵本作家になった。そのかわり。この家の家賃だって食費だって、わたしが出してるもん」
「はいはい。俺が稼げたらいいんだけどね」
これは、令和二十六年になっても、星が金平糖のように咲く、ある島での話。
金平糖のお医者さん 瑞葉 @mizuha1208mizu_iro
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