第9話 今度、洞窟に行こう

「洞窟? お前、波の音嫌いだって」

 宙太は目を見開いた。島の西の洞窟は岩場にあるから、わたしは岩場で溺れかけて以来、ずっと避けてた。

「変な医者が、これくれたけん」

 わたしは金平糖の瓶を見せる。

「あー。あの変なメンタルクリニック。なんでも、『腕利き』らしいでよ。別の意味でな」

 宙太は優しい目をして、海に沈む夕陽を見てた。

 いろいろ話してくれる。

「長いこと、独り言が治らんかった横田さんちのおばあちゃんに梅昆布茶の『処方箋』出して、三日に一回、世間話だけして、おばあちゃんは治ったらしいでよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る