10.
そうしていると、人気のない、薄暗がりの神社が見えてきた。
ここならば、安全──。
「──あ」
鳥居を潜った直後、鼻緒が切れてしまったようだ、ジルヴァやらたこ焼きやら金魚やらを投げ飛ばし、盛大に転んでしまった。
走っている最中も思っていた、下駄の走りにくさに嫌な予感を覚えていたが、現実になるとは。
全身がじんじんと痛む。受け身を取れない格好であったから、競い合うようにあちこちが痛くて仕方ない。血が出ているかもしれない。だが、自分よりもジルヴァが怪我をしてなければいい。
「そうだ、ジルヴァ!」
勢いで起き上がり、目先に飛んでいったはずの子狼を見やる。すると、散らばってしまったたこ焼きを素手で取ろうとして、しかし、熱くて取れずにいる甚平姿の男の子がいた。
「ジルヴァ……?」
呟くように言ったが、大きな耳をぴんと立てたジルヴァがこちらに勢いよく振り返った。
「あ、しょーやさま! たこやき、あつくてたべれないです!」
てててっとこちらに駆け寄って、まだ無事そうな入れ物に入っていたたこ焼きを持って涙目になって訴えていた。
なんなんだろうか、この温度差は。
呆気に取られ、ひとまず食べさせてあげようと、その場にあぐらをかこうとした。
「……い、っ!」
「しょーやさま! どこかいたいのですか?」
「あぁ、まあ……」
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