5.

「……嘘だろ」

「はぁ? まだ疑うのかよ。だったら、ナンパしてこい!」

「俺がするわけないだろう」

「そんなこと、可愛い弟のおれが分からないはずがないじゃ〜ん!」


冗談冗談と、馬鹿笑いをしていた。


はっ倒すぞ。


「わんっ!」


殺意に塗れ、実行に移そうとした時、腕の中で大人しくしていたジルヴァが、祥也の前にある屋台を方を見ていた。

その視線の先に見やると。


「……金魚すくい?」


屋台に書かれているものを読み上げる。

何人かがしゃがんで、漂う金魚を悪戦苦闘している様子が後ろ姿でも見て取れた。


「なんだ? ジルヴァは金魚食いたいっていうのか?」

「くぅん?」


涙を拭いながら尋ねてくる奴に、小さな小首を傾げていた。


「金魚は食い物じゃねーけど、おれが取ってやるぞ!」


そう意気込んで一人、その金魚すくいの人だかりの一人となった。

夏祭りに行ったのは、奴が産まれる前までのほんの数年程度で、ほぼ覚えていなく、金魚すくいは初めて見たにも等しいものだった。

どうやってやるのか、ほぼ興味本位で、ジルヴァと共に奴の隣に並んで見ていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る