4.

昔から定期的に床屋にも行かせ

てもらえなかった祥也は、自身で髪を切ることが多かった。ところがある日、大失敗してしまい、クラス中の笑い者にされたトラウマがあり、それ以降、心を閉ざしたことを表すように前髪を伸ばし、視界を遮っていった。


「……どうせ、変な髪型だと笑ってるんだろ」

「そんなわけがねーだろ」


被せるように奴が言うのを、祥也は思わず振り返ると、ビシっと指を差される。


「今までの方が変な髪型だったわけ! 兄貴は普通よりも顔がいいんだから、きちんと髪を整えてやれば、誰もが思わず見惚れてしまういい仕上がりになるんだよっ!」

「……それこそないだろ」

「周りを見てみろっ!」


後頭部をガッと掴まれ、無理やり周りの方へ向けさせられる。

行き交う人達の姿を捉えたが、その中で、屋台を見ながらも時折こちらに熱い視線を向けているような女子二人組、すれ違いざま、ジルヴァや奴のことを言いながらも、視線だけは祥也の方を向いていたが、こちらと視線が合うと甲高い声を上げて、走り去っていた。

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