7.

「なんだ、一匹もらえるじゃないか」

「そうだけどさー、いっぱい欲しいじゃん?」

「お前が世話しろよ」

「はーい。あ、たこ焼きあるぜ!」


ドタドタと忙しなく駆けていくのを、「全く……」とため息を吐いた。


「くぅん?」

「……ジルヴァ、良かったな。金魚、欲しかったんだろ?」

「わんっ!」


嬉しそうに鳴き、その勢いで頬を舐めまくってくる。


「やめろって……」


その言葉とは裏腹に、頬を緩ませていたのを、祥也自身は気づいていなかった。


「──お兄さん、今ひとりぃ?」


戯れていたひとときを一瞬にして破ってくる、まとわりつく声。

その声の方へ顔を向けると、濃い化粧をした派手な女子二人組がにっこりと笑う。


苦手なタイプだ。


夜遅くに来る客のことを思い出しながらも、「……何か用で」と返す。


「私たちぃ、彼ピッピにドタられてめちゃかなぴくってぇ〜。だから、かっこいいお兄さんになぐさめて欲しいなって!」


お願いと、恐怖すら覚えるつけまつ毛を付けた目で上目遣いで言われる。

今までの、目元まで前髪が長かった時は、人のことを嘲笑していたクセに、整えた途端にこんなにもあからさまに態度を変えてくるとは。

遠巻きで見ていた人らの方がまだ可愛かったなと、奴に対して再び殺意が芽生え始めた。


「……俺じゃなくても、他にもいると思いますが」

「そんなこと言わず〜! 一緒に行こうよ!」

「……っ!」


ぞわっ。

ごく自然と腕を絡めてきた瞬間、総毛だったのを感じる。


気持ち悪い。


早く解いてしまいたい衝動に駆られた。

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