お客様より預かった髪と頭、この両手でかならず癒やす!

 シャンプーマン。それは美容院を訪れるお客様の髪をカットするのでなく洗う、言わばアシスタントである。だがしかし! 主に新人が担うこの任を最高の誇りをもって請け負い、最高の技術をもって遂行する“わたし”がいた! これはシャンプーを極めんと日々務め、努める戦士の手記である。

 シャンプーで指名が入るレベルの達人級シャンプーマンの奮闘記、“調子”がまさに絶妙なのですよ。歯切れのいい状況描写にからっとした心情描写を添えて、たんたんたん、畳みかけるように記された文章はまさに名調子!

 しかもそれが一本調子じゃないのです。シャンプーへの尽きない情熱あり、シャンプーの重要性を誰より理解しているからこその苦しみや苛立ちあり、シャンプーを通して心を通わせたお客様との一幕あり……いろいろな角度からまるで焦点をずらすことなく語り上げられた「シャンプーマン」の姿、ハードボイルドみすら感じてしまいました。

 理容院好きの方も、本作を読めば一度は美容院へ行ってみたくなること間違いなしですよ!


(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=高橋剛)

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