ゾウリムシになりたいうた【第二回短歌・俳句コンテスト 短歌ニ十首】

にわ冬莉

短歌ニ十首部門『ゾウリムシになりたいうた』



出会いこそ 最悪だった 二人でも 共に歩んだ ゾウリムシなの


見たことの ない景色たち 広がって あなたと二人 ゾウリムシなの


傍にいて 温もりだけを 噛み締める 可愛さ増した ゾウリムシなの


肌と肌 合わせ存在 確かめる 幸せ思う ゾウリムシなの


キラキラの 二人の時間 永遠に 続けと願う ゾウリムシなの


穏やかに 四季の変わりを 見送った 明日は晴れる ゾウリムシなの


ふざけ合い 笑い合った日 薄らいで いつしか曇る ゾウリムシなの


行き場ない 私に言った 「ここにいて」 忘れたくない ゾウリムシなの


約束は 雨と流れて 海へ行く 嘘のかたまり ゾウリムシなの


来た道を やり直すなど 不可能ね すれ違い出す ゾウリムシなの



頭から がぶりと食われ 息絶える あなたになれぬ ゾウリムシなの


カタコトで なんで?と聞いた 夏の夜 あなたは去った ゾウリムシなの


嫌いだと 言われたならば 違ってた 未来などない ゾウリムシなの


画面から 流るる歌を 拒絶する 愛などないわ ゾウリムシなの


笑ってる あなたの顔に 殺される 昼間も闇夜 ゾウリムシなの


死なないで 綺麗事よね その台詞 私はいらない ゾウリムシなの


人魚姫 私がナイフ 手にしたら 迷わず刺すわ ゾウリムシなの


強がりを 口にしたとて 泡になる 海の藻屑ね ゾウリムシなの


この命 なかったことに したいのよ 誰もいないの ゾウリムシなの


ひとひらの 散る花びらの 切なさよ 私は来世 ゾウリムシなの

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