この物語は、アメリカで生き抜くために通訳の仕事を始めた日本人女性・真奈の奮闘を描くエッセイ的な「サバイバルストーリー」です。異文化の中で苦労しながらも、持ち前の明るさでさまざまな仕事に挑戦するヒロインの姿が印象的でした。
アメリカでの生活を夢見て渡った真奈は、厳しい現実に直面します。言葉や文化の壁に悩みながらも通訳の仕事をこなし、やがて旅行会社の副社長やラジオプロデューサーなど、多岐にわたる職業を経験します。異文化の中で葛藤しながらも、成長していく彼女の姿はとても力強いです。
またジャパン・バッシングの影響を受けながらも、日本人としての誇りを持ち続ける姿も印象的でした。夫のマイケルや周囲のアメリカ人たちとの関係も温かく、異文化交流の面白さが伝わってきます。
軽快でユーモアあふれる語り口は特徴的です。異文化の壁にぶつかるシリアスな場面でも、前向きな真奈の姿勢に強い好感を覚えます。爆破予告の飛行機に飛び込む場面では手に汗を握り、日本語の発音を教える場面では思わず笑ってしまうなど、エピソードの数々が実に魅力的です。
この作品は、どんな環境でも生き抜く力の大切さを教えてくれます。異文化の中で奮闘しながらも自分の道を切り開く真奈の姿から、勇気と感動をもらいました。
高度成長期が終了、成長率も徐々に低下しつつあった1970年代後半。日本人である真奈・りさは婚約者と結婚するため、アメリカはデトロイトへと向かう。そこから始まる異文化生活はけして楽しいばかりのものではなかったが、彼女は折れることなく奮い立ち、生き抜くための挑戦を開始した!
真奈さんの半生を描くこのエッセイ、ひと言で感想を述べるならジェットコースターというやつですね。デトロイトで結婚! そこから必要性に駆られて様々な仕事を請け負う! 危険な目に合ったりしつつも折れることなく挑戦挑戦挑戦! 流れをなぞるだけでも興味深いのですが。その強さの根底にあるものが日本人としてのプライドだという点、思わず惹き込まれました。
当時のアメリカで日本人が生きることの難しさは本文に綴られている通りですが、だからこそ、この生々しい時代のど真ん中で真奈さんが周囲と情を通わせて生き抜いていく姿は頼もしく、爽快なのです。
急勾配な人生録と波瀾万丈な挑戦劇を同時にお楽しみください!
(「なにはなくとも世は情け!」4選/文=高橋剛)