市場
ここでは果物が安く、ありふれていて、私を有頂天にさせた。市場の露店で、串に刺したカットフルーツを買い求めては、ビニール袋にそっけなく突っ込まれたそれを朝食にする。その習慣は飽かず続いた。果物の種類はいくらでもあって、味に慣れることはなかったから。
ここの人たちは皆高血圧なのかしらん。そんなことを思ってしまうくらい、市場は賑やかだった。誰もが声を張り上げて活き活きと言葉を発し、受け取った相手もまた同じくらい声を張り上げて応じている。生命力の塊のようだ。縦長にカットしたパインを露店の隣でかじりつきながら、私は市場の人々を眺める。個人というよりは、一つの連絡し合う現象のように。
それはつまり、私はまだ土地に馴染めていない、ってことだけど。任期の間にはこの場のエネルギーの一部になれるのだろうか。
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