古城

 その墓所は森の只中にあった。道から外れて、木こりも通りがからないような一角だったから、それと知らなければまず辿り着かない。私は厳重に隠された取っ手を探り当てて、内部の通路へ足を踏み入れる。


 内部は乾ききっていた。塵埃が降り積もり、通路の隅にわだかまる。足跡が付くのは致し方なかったが、そのことは私をいささか焦らせた。もし見とがめられたら。森番なりが隠された通路の入り口を偶然にも探し当てて、無謀にも侵入者の後を追ってきたならば? 蓋然性の低い妄想が思考の片隅を占拠する。ばかばかしい考えだった。自分の役割は、城主暗殺の実行犯ですらないというのに。いや、だからこそ。暗い目をした赤毛の女は果たしてやり遂げるのだろうか。私は彼女を伴い、来たのとは別の脱出経路へ導かねばならない。


 粘っこく不吉な予感が舌の上に居座っていた。経験上、こんな夜は何かが起こる。良きにつけ悪しきにつけ、目論見通りとはいかない、何かが。

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