雪原

 断ち割ったような峻険が、東側だけ青く染まった。夜明けの寸前の、空が全体的に青黒くぼうっと光る時のことだ。

 葉を落とした木々が死骸のように立ち並ぶ。そのうちの何本かは、昨夜のうちに幹がはじけていた。樹液が凍り付いて膨張するのに耐えきれなかったためだ。難を逃れた残りの木々は、朝を目前にして暗い安堵をしているかのようだった。

 木立の間からいくつかの人影が垣間見える。人里離れた山小屋に向かい、ロートルを始末するのだ。身を隠す必要を感じていないらしい。

 老人は行動に移った。翌朝を迎える、幸運な枯れ木となるべく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る