第14話 赤城山の夜明け

 北九州に戻った僕は、取り急ぎ会社に出向き辞職願を提出した。

10年以上お世話になったこの会社に別れを告げる日が来るとは思わなかった。

いつも気さくな事務の木村さんが、涙を流して喜んでくれた。

「そう、いよいよ再出発するのね。頑張って。」そして、ここの会社に来てからずっとずっとお世話になった、橘さんに別れを告げた。

「おう、小倉で飲んだ時、そうなると思っていた。良いひと見つけたじゃないか、幸せになれよ。おまえさんが幸せじゃ無かったら、相手を幸せになんて出来っこないから。」そう言って笑って、送り出してくれた。

 その後アパートに行き、大家さんと連絡をとって引き払うことを告げた。

「そうかい?なんだか寂しくなるねぇ」と言って、目頭をエプロンの裾で拭いていた。「実際の荷物の搬出は、少し先になると思いますが、殆どの荷物は廃棄するつもりなので、欲しい方があったら声かけてください。」と話しておいた。

 翌日には、飛行機で東京にトンボ帰りして、田舎に向かう。駅まで容子が迎えにきてくれて、その足で不動産屋に行く。取り急ぎのアパートを物色し、契約を交わす。

アパートのカーテンや、照明、家具などを決めて走り、来月末にはここで二人の生活を始められる様な準備をした。

 容子も、会社の代表を息子の龍司に託し、会社の定款変更や銀行の手続きに奔走した。完全に会社から身を引きたいと言う容子をを、二人の息子の説得で、相談役として名前を残すことにした。

「ふぅ、なんか目まぐるしく毎日が過ぎるわね。」と言いながら、とても充実した顔をしている。

 二人で暮らすと言っても、入籍などはせず、あくまで人生のパートナーとして同居という形にした。「急がなきゃ、私たち何歳まで元気でいられるか分からないけど、平均寿命でも後20年と少し?今までの時間が40年だから、半分しかないのよ。悩んでる暇なんかないわ。」と全てに置いて積極的かつ行動的にこなして行った。

その結果、予定通りで全てが収まり、本当に二人の生活が始まった。


 昨年、秋に書いてアップした「金木犀の片思い」は僕の中では大ヒットで、沢山の応援を頂きました。しかし、その後の顛末はこの小説を読んでいただいた通りで、書く様な状況ではなくなり、ずっと気になっていました。

 久しぶりにカクヨムのサイトを開き、以前アップしていたが、アクセスが伸びなかった「ドライフラワー」が目に留まり、容子との出会いを綴っていたが、本として面白くないと思い、リメイクすることにしたのです。引っ越しも落ち着き、

新しいMacBook Airを購入し、そして今この「ドライフラワー 〜その後〜」を執筆しています。今回も多くのアクセスと応援をいただき、この場を借りて改めてお礼を述べさせて頂きます。

今この本を書いている隣で、容子は僕の書いた小説を携帯で読んでおり、都度、ツッコミを入れて来ます。

「えぇ〜、これじゃ私の一方的な片思いじゃん、おかしくね?」などと言っては、感想をくれます。


「ねえ和哉、私たちのお家をどこかに建てましょうか?」と容子が言い出した。

「そうだな、本当は終の住処にしたい場所があるんだ。」

「えっつ、そなの?それはどこ?」

「群馬県の渋川市」

「どうして?」

「仕事で以前、2ヶ月位いた事があって、丁度冬だったんだけれど、赤城山の麓は緩やかな傾斜地で開けていて、まるで北海道?と思うくらい雪景色が綺麗だったんだ。あと、宿泊していたホテルの窓から赤城山が見えて、その朝焼けがとても綺麗だった。山の美しさは裾野に向かう稜線の美しさだと思う。とにかく、こんな自然豊かなところに僕の終の住処が作れたら、幸せだろうなと思ったんだ。」

「そうなんだ、私も行ってみたい。」

「うん、伊香保温泉があるから行ってみようか?」

「賛成ーっ。」

こうなると話は早い。すぐに地図アプリを開き旅行プランを考え始めた。

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ドライフラワー 〜 その後 〜 神田川 散歩 @nightbirds60

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