宇宙船ペパーミント

菫野

宇宙船ペパーミント

ガラスドームこはれたところから闇がひろがりやまぬここは廃星


あぢさゐに指沈めれば底無しの花宇宙より深くひろごる


量子力学知らざりしわれの手で光の粒は寒天となり


妹は銀河びととふ人類のすゑと婚姻せり六月に


銀河には不可思議の慣用句あり「地球の雲のやうに自由に」


壁に絵を掛けてもひとりには慣れぬままで地球の雲を見てゐる


夏の枇杷を星間便で妹に送らむとして青果店へと


夕星ゆふづつにも人は住みをりあちらでは胡瓜冬瓜食ぶるものかは


六連星プレアデスながむる水の無い星で人魚はどうしてゐるのでせうか


泰山木の花ひらきゆく銀河行き最終列車みあぐるやうに


スカートの一部であつた黒猫がを開く美しきコラージュのごと


わたくしの皮膚をざわりと吸ひ寄せて見えない猫は夜を出てゆく


尿ゆまりする猫のしっぽを触つてはいけませんよと母の遺言


読みさした歌集を伏せてああきつとわたしの猫はうみだつたのだ


梅雨空にあんなに碧い宇宙船ペパーミントのタブレット欲る


ゆふぐれの踵にあはき靴擦れの痕はいつしか銀河となりて


牡羊座アリエスを今は旅する友人のポストカードにμミュウの消印


いづれまた少女のやうに会うのでせうが購ひし星の汀で


砂のを裸足で行けば このそらを卵のなかに巻き戻せたら


人類は銀河を病めり削氷けづりひのメロンシロップのごとくさびしい

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宇宙船ペパーミント 菫野 @ayagonmail

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