連作としての構成美というものなのか、舞台設定が極めて一貫している。
宇宙を飛び回って色んな星へ旅する人々。
銀河には不可思議の慣用句あり「地球の雲のやうに自由に」
のように科学技術の発展が新しい慣用句を産んでいる様は楽しい。
連作の良さはテーマや設定を共有している一貫性のみではなく、その順番が生む一種の「流れ」とそこからの「逸脱」であると思う。
ここでは四首連続して「猫」を詠んだ歌が並んでいる箇所がある。
その最初は
スカートの一部であつた黒猫が眸(め)を開く美しきコラージュのごと
という歌。
「スカートの一部であつた黒猫」とは多分黒いスカートに黒い猫がいるように闇色に溶け込んでいる様を描いているのだろう。
黒猫の目は黄色いのが多いだろうか。
闇色の中にいきなり黄色い眸が浮かび上がる様を「コラージュ」に例えている。
実に上手い比喩だ。コラージュの真髄は異化効果であった。闇の中に「眸」が浮び上がる不調和の美学。
軽やかさのうちに冴えた技巧を秘めた歌群である。