うぶ王による過剰な溺愛……いや、超純愛。

戦乙女として家族であるはずの王家に利用され続けたクラルス王国の王女エルは、敵国のアウレア王国に売られてしまう。売られた先で冷酷非道と噂のユリウス王に酷いことをされる……かと思いきや。この王、ぜんぜん目を合わせない。それどころか「心臓が張り裂けるからこっちを見ないでくれ」などと言って、赤くなった顔を隠してしまう。なんとエルに一目惚れしてしまったとか。その上、とんでもなくうぶなのである。

うぶなのに独占欲が強く片時もエルのそばを離れようとせず、エルを害するものを全て滅ぼそうとする極端なユリウスの愛は、普通なら逃げたくなるほど重たい。だが、戦場の象徴として感情を殺して生きてきた空っぽのエルを満たすには、これくらいの重さが必要だ。

エルはアウレア王国でユリウスと触れ合ううちに怒りや悲しみ、喜びといった人として当たり前の感情を取り戻していく。そして、「好き」という気持ちも――。

ヤンデレ気味なユリウスの人物像も丁寧に描かれていて、単純に愛が重いだけのヒーローではないところが特に良かった。一国の王として、そして一人の男性としてユリウス自身も変わっていく。そして、エルも。

お互いに愛を知らないうぶな二人の純度の高い過剰な「純愛」を、ぜひお楽しみあれ!

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