第8話

門司港の歴史的なホテルで行われた記者会見は、多くの報道陣が詰めかける中、静かに始まった。将棋連盟の理事長である北村健が壇上に立ち、深い悲しみを帯びた表情で会場を見渡した。


「本日は、松本一郎名人の死に関する調査結果を報告いたします。私たちは、藤崎恭一名人が松本氏を毒殺したという事実を非常に重く受け止めています。この事件は、将棋界にとって大きな衝撃であり、深い悲しみをもたらしました。」


北村は一瞬、言葉を詰まらせ、深く息を吸い込んだ。

「藤崎名人は逮捕され、法の裁きを受けることとなります。我々は、この悲劇から教訓を学び、再発防止に努めてまいります。松本氏のご冥福を心よりお祈り申し上げます。」


記者たちのフラッシュが一斉に光り、質問が飛び交う中、北村は毅然とした態度でそれらに応じた。将棋連盟の誠実な姿勢が垣間見えた瞬間だった。


その夜、探偵事務所で香織と涼介は静かにコーヒーを飲みながら、事件のことを振り返っていた。事務所の窓からは、夜の門司港の美しい夜景が見渡せた。


「今回の事件は本当に大きな試練だったわね」

と香織が言った。


「そうだね。藤崎名人の心の中には、誰もが抱える闇があった。それを見抜くのは本当に難しかった」と涼介が応じた。


二人はしばらく沈黙し、コーヒーの香りを楽しんだ。ふと、香織が思い立ったように口を開いた。「でも、これで終わりじゃないわ。私たちにはまだ解決しなければならない謎がたくさんある。」


涼介は微笑みながら、

「そうだね。次の事件も待っている。だけど、今回の経験が必ず役立つはずだ。」


その時、事務所の電話が鳴り響いた。香織が電話を取ると、相手は明らかに慌てた様子で話し始めた。


「三田村さん、藤田さん、すぐに来てください。新しい事件が発生しました。これまでにないほどの複雑な事件です!」


香織は涼介と視線を交わし、電話の内容を簡潔に伝えた。「次の挑戦が待っているわ。」


涼介は立ち上がり、コートを手に取った。「行こう、香織。この街にはまだ解決すべき謎が山ほどある。」


二人は迅速に事務所を出て、夜の門司港に消えていった。新たな事件が彼らを待ち受けていることを予感させるように、夜の街は静かに彼らを見送った


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港町事件簿 探偵事務所編 王将の死角 @minatomachi @minatomachi

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