頼る男と頼らない女

陶来鍬紘

第1話 きっかけ

頼仁は母にキツく言われていた。「1人の力じゃ難しい。イイ?人という字は人と人が助合ってできるの。人生で悩むことがあったら、迷わず誰かを頼りなさい。」

頼子は父にかなり言われていた。「自分で行動しなさい。自分の足で歩き、自分の手で食べ自分の頭で考えろ。」そんな2人がとある会社で出会った。



都内の居酒屋でお座敷の上で愚痴のように言った。


---同期会も最初は大勢いたのに今は5人。寂しいね…

---仕方ないだろ水野。みんな、出世してるし、忙しい。結婚して退職なんてパターンもある。来てくれるだけでありがたいよ。


皆田は頷きながら腕を組み言った。


---そんな噛みしめるように言わなくても…

---ところでアレ誰?

---皆田君アレ誰は失礼でしょ!さっきまでありがとうとか言ってた癖に。今寝てるけど、経理課の堀田さんだよ!

---何だ?惚れたのか?


下品な目で聞く水野。


---1回見たら、忘れない筈なんだけどな…。

---堀田さん普段からメガネかけてるから、力尽きて寝る時メガネも落ちちゃたのね。

 

ぐっすり寝てるな堀田さん。かわいい。地味だけど、仕事は出来るし、真面目だし、と皆田は顔を近づけて思った。

 

---皆田君顔近すぎ。そんなに近いとセクハラで訴えはられるよ。 

それを部長が聞いたら間違いなく 


---クビだな。例え無罪だろうが

---ちょっと水野君そこ言いたかったのに!


と、塚原は水野に強く言った。


---ちょっとみんな〜堀田さんが目を覚ましたら、解散で。


と、皆田は言った。取り仕切りは皆田の様だった。その後すぐに

---皆田くーん、堀田さん起きたみたい。

---OKじゃあ、みんな帰る準備して1人3,800円ね。先に払っとくからあとから頂戴を。もちろん現金で

---皆田さんステキ!

---皆田君カッコいい!


と水野と塚原が声色を変えて言った。


---はーい。特に忖度はしません。きっちり頂きます。


皆田は騙されることなく、淡々と無表情で言った。

そのやりとりが目に入らないのか頼子はボーっとしていた。解散となり、明日も出社する人もいたのでみんな帰ることにした。食事してた場所を基準にふた手にわかれた。片方は皆田と頼子だった。


---堀田さん何駅?

---◯◯駅です。

---同い年だから敬語じゃなくていいよ。もう何回も会ってるし

---わかり…分かった。慣れないから徐々に直すね。皆田君は何駅?

---△△駅ここから3つ目。◯◯駅まで行って、堀田さんを送りたいけど、◯◯駅ってこっから遠いよね?

---大丈夫です。1人で帰れるし、駅から近いんで!こっから最寄りの駅まで1時間くらい。座れたし、携帯いじっていればすぐ着きますよ! 

---ゴメンね。明日会社なければタクシーで家まで送ったのに。

---あ!そういえば、LINEで見間違いてしまって3,600円しか持ってきてないのです。

---経理課のクセに〜。料金は後日で良いからあとでLINEして


皆田はそうして、頼子を見送った。皆田は1人になっても頼子のことを考えていた。

頼子も皆田の事を思った。


次の日、昼前にLINEがきた。<お金は用意した。今夜、受け取れるか?>皆田は自分は誘拐犯かと思った。でも、なるべく早くOKと返信した、スタンプ付きで。

夜になり休みの頼子はわざわざ会社まできた。私服で。同期会の時は仕事終わりだった為、私服でも、あまりオシャレ出来なかったが、休みの日だと違う。頼子さんかわいい皆田はそう思った。早めに上がれた頼仁は頼子と夜ごはんを食べた。


---お金、週明けで良かったのに。そうだ!夜ご飯一緒に食べない?奢るから返して貰ったお金で

---ちょっと待ってください。父に作るって言ったから、断っとくね。

---そんな申し訳ない。ありがとう。お父さん大丈夫なの?。

---多分…。友達と会うって言ってあるし。


頼子はスマホをカバンから出した。


とりあえず、堀田さんついて来て予約している店があるんだ。ちょっと早いけど、大丈夫っしょ!


皆田の予約したお店は明らか3,800円以上するお店だった。


---私こんなお店初めて足りない分は払うよ。


手を口元に当て内緒話を話すかのように小さく言った。


---大丈夫だよ。ここまで来てくれたし、ご馳走させてよ。


皆田は英語で書かれているワインを注文した。皆田君ってこんなにスマートなの!頼子は皆田の姿に見惚れてた。


---ふぅお腹いっぱい満足。


皆田はお腹を二回叩いた。


---ご馳走様。皆田君ここ来たことあるの?

---うん。何度もあるよ。

皆田しれっとウソをついた。来たのは初めてだ。でわ、何故英語で書かれたメニューを注文出来たのか。それは、昼前に戻る。土曜日のオフィスは休みの人がほとんどの為、けスマホがイジリ放題だった。そこで皆田は頼子からLINEを受け取ると、すぐに佐野龍にLINEした。好きな人が夜にウチの会社まで来る。どうしよう。佐野は土曜日にわざわざ来てくれるとか絶対オマエに気があるじゃん!夜ならこの店に誘ってこのワインを注文しろ。英語だからカタカナで送る。それを夜までに覚えろ。

力強いメッセージとともに困ったら、全部佐野君に聞こう!心の中で思った。

佐野龍は無口だ。だが、心を許した皆田にはよく話した。彼は皆田と同期だ。先日開かれた同期会にも参加済みだった。


---今日こそ送るよ。明日休みだし

---ううんパパが迎えに来てるから…


もしかして避けられてる?でも!皆田は一瞬弱気になったが、気持ちが押さえられなかった。


---頼子さん僕と結婚を前提に付き合って下さい!


頼仁人生で初めての告白だった。アドバイスにはなかったが、抑えられなかった。告白ってこんなに緊張するし、恥ずかしいものなんだと感じた。とはいえ、まだ一回目の2人きりだ。いくら勝ち確でも、初回から告白だから断られる可能性もある。

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