第5話秘密
秋
その後、物件も頼子の提案などで決まり、同棲も軌道に乗り始め、生活にリズムがで始めた頃。佐野が言った。
---いい加減彼女見せろよ。写真すらないっておかしいじゃねーか。
.---うん…。彼女が写真苦手なんだ。
辿々しい皆田は嘘をついたが、目が泳いだ。
---そうだ!同期会をお前ん家でやろう。どうせ、今年みたいにいつメンしか来ないから。
---お前、人見知りはどうすんの?
---そこだよな。急にフレンドリーになっても変だしな。仕事モードで対応するしかない。それなら付かず離れずだから
---普段からやれよ!同期会でのお前、人形みたいだから。
---はいはい。それで、今回はわたくし佐野が幹事を務めますので、初めてなのではフォロー宜しくお願いします。
困ったことになったぞ。家が散らかってって誤魔化しても良いけど。日を改めて来そうだし。空気が壊れるのも嫌だしとりあえずLINEで聞いてみよ。と、皆田は考えた。頼仁が良いならいいよ。という返事だった。皆田は悩んだが、とりあえず佐野に任せることにした。そして何日かたち、皆田の家で同期会という名のお披露目会が開催された。メンバーも水野・塚原・佐野・皆田の4人だった。
---あれ?堀田さんは?
---忙しいって
---さすが経理部のエース
何も知らない3人は呑気に語ってた。皆田と頼子は緊張していた。
---皆田君同棲相手私たちに紹介してくれるんだよね?
と塚原は念を押して聞いた。
---どんな魅力的な女性かな〜。
---水野ハードル上げんなよ!
---それでは登場してもらいましょう。どうぞ‼︎
リビングに繋がっている和室の扉がガラガラと音をたてて開いた。
そこには堀田頼子が立っていた。
「「「堀田さんっ?」」」
3人同時に驚いた。そして、いの一番に塚原が聞いた。
---え、2人はいつから?なんて呼び合っているの?
---2年前から
塚原の質問に頼子が答えた。
---お互いによっちゃん。
皆田が答えた。
---そうか。でも、紛らわしくない?
水野が真面目な顔で聞いてきた。
---でも、頼子が言うよっちゃんはよにイントネーションつけてオレが言うよっちゃんはちにイントネーションをつけてるんだ。つまり、頼子のよっちゃんはよっちゃんイカのよっちゃん。オレが言うよっちゃんは、金田一少年がじっちゃんの名にかける。時のじっちゃんと同じ発音。イントネーションを変えれば、同じ文字でも、違った風に聞こえるんだ。
---皆田君は堀田さんのどこが好きなの?
水野がやらしい目で聞いてきた。
---顔!あと、優しいけど頑固な所、すぐ調べようとする所。とにかく、全部。
---ご馳走様です。
と、頭を下げる水野。
---って事は、オレに相談した彼女ってのは?
佐野が焦って聞いた。
---あうん、堀田さん。
皆田が質問に答えた。頼子は出る前は緊張していつも以上にドキドキするのが分かったが、同期会のメンバーの顔を見て安心した。
---何で隠したんだよ!言えば良かったのに。後ろめたい気持ちなんてなかったのに
と、水野が少し強めに言うと佐野が
---社則を見たのか?社内恋愛禁止って書かれてあるから、それを守っただけじゃん?
---うわ、佐野の声初めて聞いた。
---それって今日の話だよね?司会やったんですけど!塚原さん、会話を促す為に毎回言うけど逆に話しづらいわ!
---しかし、社則がやっかいだな。
今度は深刻そうに水野が言った。
---破るわけにはいかないだろ?だから、隠してる。
---住所とか一緒だし、よくバレなかったね。
塚原が感心した。
---そこは経理部のエースが抜かりなく変更してます。
と、鼻高々の皆田。
---だから、隠蔽出来たのか。
---おいおい水野君人聞き悪いよ。隠蔽してない。普通に処理しただけだ。
と、皆田は言った。それに続いて
---頼むから皆んなには黙っといて貰えないか?じゃないとクビになるから、お願いします!
「「タダで?」」
塚原と水野がハモった。こういう事には敏感である。
---分かったよ!焼き肉奢るから約束してくれ
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