豆はエッセイ。賞・スナックさいかわオー…

『いつもどうも……って、お休みだから誰もいないですよね。はい、置き配です。それにしてもこの店、スナックさいかわのママさん、ワイン買いすぎじゃないかな。オーナーさん、代引きのお金、桁が違うときだけなんだか目が笑ってなくて。めちゃくちゃ優しそうなのになんか、怒らせたらヤバそうなんだよな。まあ、これは置き配だからママさんも大丈夫かな……?』


 運送車のエンジン音が、遠くに消えていきました。

 配達業者さん、お疲れさまです。いつもありがとうございます。

 目が笑ってませんでしたか、そうですか。

 気を付けないといけませんね。


 そうです、今日はスナックさいかわは、お休み。

 誰もいないはずの店内におりますのは……。


 こんばんは、スナックさいかわは本日お休みですが、私、オーナー豆ははこ、こちらに来ております。

 オーナーの特権でしてね、たまに、こうしてお休みの日に裏口から入るんですよ。

 勝手に臨時開店です。

 もちろん、設備の確認とか、避難経路に荷物がないかとか、あったらどかして、そういうこともしているんですよ。

 ワインセラーの清掃もするときはしますよ。空調確認もです。


 でも、いちばんの目的はこちら。

 サッ⚪ロクラシックを開けて、ポリポリと。

 これもまた、オーナーの特権です。

 ビールはサッポ⚪クラシック。

 そして、今回のおつまみは。ジャーマンポテトでも、ハムカツでもなくて。

 カル⚪ーのポテトチップス。コンソメ⚪⚪⚪味です。

 ママがここにいたら、「あ、今日はおいしいもの、持ってきてくれないと思ったら、そういうことぉ?」とかわいらしく言うのでしょうね。


 こちらを拝読していたら、食べたくなりました。

 あちらは歴史と伝統のう⚪しおですけれども。


 そうです。

 今回の豆はエッセイ。賞に選ばせて頂きましたご著作は、幸まる様著『嗚呼 憧れのポテトチップス』でございます。


https://kakuyomu.jp/works/16818093087400393952


 まずは、ネタバレにならないように内容をご説明いたしますね。

 幸まる様がお子さまでいらした頃、ご家庭では普通におやつとして出て来るものが、出て来ない。

 いわゆる既製品のお菓子ですね。

 幸まる様のご家庭にはお父様のご職業から、安全性を保証されたものを召し上がるという不文律のようなものがあり、ご家族の皆さんはそれを理解しておられました。

 そして、お母様がこれまたなんでも創造してしまわれるのでは、というお料理名人だったのです。

 ご家庭でのお料理はもちろん、おやつまで。


 なんとなんと、お友だちのおうちで幸まる様と運命的な出会いを果たされた、憧れのポテトチップスまで、手作りだったのです。

 厚みは? どのように切るか、形は……。

 職人さんのように、ポテトチップスの味を追求されるお母様の姿勢。

 お子さま時代の幸まる様の、おいしいよ……だけど……コレジャナイ……。も見所の一つですね。

 ですが、意外な形で幸まる様はカ⚪ビーのポテトチップスと再会されます。それも、なんとまあ、ご家庭で、なのです。


 どうしてそうなったのでしょうか。

 それから、ご自身がお母様となられました幸まる様の現在のご心境、ラストの部分。


 これらはぜひ、皆様もご著作で確かめて頂けたらと存じます。できましたら、カル⚪ーのポテトチップスをご用意なさってください。

 もちろん、カルビ⚪以外のお好みのスナック菓子でも。

 きっと食べたく……なりますからね?

 

 上記のように、素晴らしい内容。明快なタイトル。

 ご自身の思い出、そして、お母様となられた現在のご自身。

 楽しいエッセイとはこうである。読んでいたら、食べたくなる。

 素晴らしいエッセイです。

 このエッセイには、味が。おいしさがございます。

 ほんとうに、ごちそうさまでございました。


 幸まる様、自主企画にご参加くださいました皆様、作品をお読み頂きました方々。

 そして、自主企画主催者、犀川よう様、選考者の皆様方も。たいへんに楽しい選考をさせて頂きました。

 楽しく、そして様々な形のエッセイを拝読させて頂くことができました素晴らしい自主企画です。

 誠にありがとうございました。



 「はい、これでママからのご依頼の原稿は終了ですね」

 軽く片付けをして……。


 一応、届いた荷物を見ておきましょうか。

 いつもの専門店さんですね。きちんと冷蔵対応。さすがです。


 それでは、段ボール用のカッターで、はいはい、っと。

 あらら、シャンパーニュですか。何本かありますね。セラーに置いてあげないと。

 それにしても、シャンパーニュ。またミレジメでは……ないですね。手頃な、それでいて、なものです。よかったよかった。


 ん。

 ……おやおや、なんだか厳重に包まれた瓶がありますよ。

 きっと、これがママの本命ですね。


「ルイ・ロデレール クリスタル 。シャンパーニュの名品。さすがはママ、いいのを買いますねえ。ボックスなしで瓶だからお買い得……ですが相当なお値段ですね、これは」


 さてさて、スナックさいかわ、お休みの日ではありますが、これから忙しくなりそうですね。

 シャンパーニュをきちんと保管してあげて、あとはおつまみの準備を……。

 そうですね、この、ルイ・ロデレール クリスタルだけは私が持って帰りましょうか。


 いやいや、ほんとうに。


 今回のエッセイ自主企画と同じでしたね。

 開けてみるまで、何が出てくるか分からない、それがまた、楽しい。



 それでは、皆様、またどこかで。

 またのご機会を、お待ちしております。


 スナックさいかわオーナー 豆ははこ 拝

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