ただ一人の、あなたの為だけに贈る言葉

和の匂いが香る温泉郷の焦がれ人。


綺麗でどこか危ない感じもする黄昏の世界が頭の中に広がる感覚がしました。

猫と犬の従業員。
他の妖もいそうで、想像が溢れます。
素敵な情景でした。

作者と読者。

東雲さんのような体験はしたことはないですが、私も日々カクヨムと向き合っていますので、ズキズキと主人公のセリフには刺された思いです。

否定的な言葉はいくつもの好意的な言葉に埋もれようが、にょきりと顔を出してこちらを見つめてくる。
そんなものなのかもしれません。


『急にお前の物語へのはしごが外されたときの、俺の気持ちがわかるか?』

この言葉は本当に素敵で首が取れるほど頷きたい。

私も続きを待ち侘びているものが沢山ありますから。


幼馴染であり、心を奪われていた作品の主との7年ぶりの再会を果たし。

主人公の湧き出る言葉の数々には、これまで封じていた想いの栓が外れるようで、風化していたかのように思われた作品への興味をそうではないと確認するようで。

二つの関係性を抱えているからこそ、何倍にも言葉は膨れているように感じました。


黄昏の温泉郷とは

誰かの目や意見を気にせずに創作に向き合える場所なのか。

挫折や何かの悔しさを抱えた人が迷い込む人なのか。

それとも、創作が理由で命を絶つ選択をしてしまった人の場所なのか。

主人公の手に握られた原稿。
最終話をいち早く読んだ主人公のように。

創作と、この物語の最終話の解釈は私たちに委ねられているのかもしません。

素晴らしい作品をありがとうございました。