概要
そこにあったのは、コーヒーの香りと共に。
冬の寒さが凍みるなか、男は一軒の喫茶店へと向かう。それは学生の頃によく行っていた店で、だけれど社会人になった今では遠退いてしまった場所。 数年振りに向かった先で、男は久し振りにオーナーと会う。記憶にあるよりも皺が深くなり、髪の毛も鮮やかなロマンスグレーへと変わったオーナー。一杯のコーヒーと共に、男は取り出した煙草に火を点ける。
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おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!温かな湯気と香りはそっと背を押してくれる
場所、物、言葉。
人間はこういったものなどに、自分の存在を残すものだと思います。その存在はふとした時に、様々な情報を呼び起こすのです。香りだったり、映像だったり、気持ちだったり。逆も然り。
それらは誰かの記憶の一部となり、残り続けると共に、あの時の自分を蘇らせてくれる思い出にもなるのでしょう。
落ち着いた雰囲気を十分に感じつつ、読み進める感覚は、優しくも激しく心を揺さぶるものでした。
結婚式の帰り。思い出の喫茶店へ、半ば逃げ込むような形で訪れた主人公は、喫茶店のマスター、ネクタイ、オイルライター、マッチ、などなど。様々なものから当時の記憶を蘇らせるのですが、丁寧な表現で綴られた言葉の数々…続きを読む