ギャル視点で描かれる、新感覚ゾンビ小説

 すごいものを読んでしまった、と第一話の段階からハートを掴まれました。

 とにかく新しさに満ちています。内容も、文体も、作品を構成するコンセプトも。

 主人公は女子高生です。そして、世界にはゾンビが溢れています。
 視点は女子高生の一人称なので「ギャル」な感覚に満ちた、とてもポップでテンポのいいもの。
 ギャルなのでパワーがあり、深くは悩まず、ひたすら前へ前へと進んでいきます。ゾンビというものが溢れている世界にも、自分がゾンビになってしまった事実についても、あまり悲観することなく、その世界を生き抜く(?)ことをしていきます。

 
 このギャル視点から見るゾンビ世界というのが、とにかく新鮮で新鮮で、強烈な読書体験を与えてくれました。
 近年は芥川賞の候補作や受賞作などでSF設定やホラー設定を持ったものが独特な視点・独特な文体で綴られるのも出てきましたが、この作品もそんなテクニカルでポップな純文学作品に通ずる「凄み」があったと思います。

 とにかく、読むと圧倒されます。その上で、腰を据えずに「アハハ」と楽しく読むこともできる。かしこまらずに読めるのに、はっきりと「凄い」と言える。そんな稀有で素晴らしい作品です。

 読まないのは、絶対にもったいない!!

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