「じけんよ~! じけんよ~!」
すみれ組の情報通アユちゃんのひとことで、阿形クリスティは、赤い伊達メガネをクイッと上げます。
「これは、じけんなの。じけんのにおいがするって、いったのよ」
「じけんのにおいって、どんなにおい?」
「……とにかく、じけんだってこと!」
様々な勘違いや、圧倒的に足りない経験や知識で周りを巻き込みつつも、クリスティはちゃんと反省したり、色んなことを学びながら名探偵への道を進んでいきます。そして回を進めるごとに、大人顔負けの名探偵として、色んな人を助けていきます。
はてさて、次はどんな事件がクリスティを待っているのでしょうか?
とてつもなく楽しいミステリー作品と出会えました。
主人公は阿形クリスティ。幼稚園児の女の子です。ミステリー好きの両親に育てられたため、幼いながらも探偵に憧れています。
そんなクリスちゃんの通う幼稚園では、いつも不思議な事件が起こります。そしてクリスちゃんは探偵として事件を解決しようとするのです。
……ですが、「小さくたって頭脳は大人!」な某国民アニメの少年とは違い、クリスちゃんは本物の幼稚園児です。そう簡単には推理で真相には辿り着けません。
けれど、そこがとにかく面白いんです。
「事件の匂いがする」と口にしたら、「それってどんな匂い?」と聞き返され、給食室のカレーの匂いに引っ張られてしまう。
「ダイニング・メッセージ」と言葉を言い間違えて、本気で食堂に手がかりを探しに行ってしまう。
そういう「幼稚園児ならではの感性と発想」で、思わぬ方向へと展開が向かう。そして思わぬ手がかりにより、真相に到達します。
その上で最後に、クリスちゃんが事件を通して何かしらの「教訓」を得て、少しずつ大人になっていく。
通常のミステリーでは味わえない、独特なストーリー展開とほのぼの感が毎回楽しめます。
キャラクターもみんな楽しくて、読みながらニコニコと微笑まされます。「じけんよ~、じけんよ~」と開幕いつも口にするアユちゃん、失言しまくりのタロウくんと、それを止めるマイちゃん。顔が怖すぎて天然で幼児を畏怖させるヨシミ先生。
クリスちゃんを始めとして楽しいキャラクターたちが活躍するので、飽きずにぐいぐいと読めてしまいます。
一話ごとで完結しているストーリーなので、ちょっとした時間に少しずつ読めてしまえるのも魅力です。それでももったいないと思いつつ、どんどん読みたくなる魅力に満ちた作品でした。
ちなみに、個人的にオススメなのは『連続紛失事件』と『七夕暗号事件』でした。
皆さんも、可愛らしい幼児たちの探偵物語を、是非見守ってあげてください。
かのミステリー界の超有名人と1文字違いの園児、クリスティちゃんが身の回りで起こる謎を仲間と共に解決していきます。
でも、その謎は誰も傷つかず、苦しむ事無く優しい解決となります。
それでいて意外性のあるレベルの高い謎と、解決に至る思考が展開されており、園児探偵と言えど子供だましにはなっていません。
また、主人公のクリスティーちゃんを始め、園の友達や保育士の先生方のキャラクターも立っていて、個人的には児童文学としても高い水準ではないかな、と感じました。
普段の疲れを忘れて優しい気分になりたい。
それでいて質の高いミステリーを楽しみたい。
そんな方におススメです!