余韻まで美しい

愛の話。
父の愛も子の愛も妻の愛も母の愛も友の愛もすべてが尊い。
そして我欲含め、愛に満ち、溢れ、溺れるような作品です。

美しさがときに暴虐であるように、
無慈悲さがいっそ優しさであるように、
醜悪なまでの自己愛もたしかに愛のひとつだから。



魂、人が人であるその根源。

見えないけれど在ると知ることは、信仰にも等しい。
信じなければ、それは無いと同じことでしょう。

記憶というのは正しくその意味で、人そのものなのだと思う。
常に、都合よく改竄されるという意味でも。

事実と真実がイコールではないように、記憶というのは感情に大いに影響され編集されている。不都合な部分にはノイズがかかり、都合の良い部分を繋ぎ合わせ、多少の矛盾は気のせいで済ませ、拭い切れない違和感には目を瞑る。常習的な記憶の改竄はつまるところ生きている人間の日常そのものだ。

けれど、消去は違うだろう。
哲学でいう忘却は神の福音的なものとはあまりにも隔たりがある。
絶望的なそれすらも愛が補うのだ。

父が、これからも父を愛し父が愛する人たちと、愛を交わし愛に満ち溢れた生を歩むことを祈ります。



タイトル煽りの力強さからは想像もできなかった余韻をぜひ味わって欲しい。
揺れる水面の月明かりのようなやわらかさもあり、御来光のような荘厳さもあり、春の日向のぬくもりの様でもある、それぞれの余韻を。



ありがとうございました。
書籍も購入させていただきます。

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