シャルル七世のプレジャーズ・オブ・ライフ(3)教養と趣味を楽しむ

(※)前々回〜前回のタイトルを変更。本文と区別するため、あとがき3話分を「章」分けしました。





 2024年現在、フランス・パリのクリュニー美術館(国立中世美術館)で『シャルル七世時代のフランスの芸術展(LES ARTS EN FRANCE SOUS CHARLES VII)』を開催している。


 歴史家たちのトークとは少し違うが、フランス本国における最新の「シャルル七世」といえるだろう。


 まずは、名前を冠した展覧会をやれるくらいには再評価が進んでいることを喜びたい。


 この展覧会は、前々回と前回でテーマにした「シャルル七世の快楽(plaisir)」が本当はどういうものだったかを証明する一助になると思うので、プレスリリース(報道資料)を翻訳して紹介する。




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『シャルル七世時代におけるフランスの芸術』

LES ARTS EN FRANCE SOUS CHARLES VII (1422-1461)


 シャルル七世の治世において、芸術は驚異的な復興を遂げた。

 2024年3月12日から6月16日まで、クリュニー美術館(国立中世美術館)で開催される『シャルル七世時代(1422~1461)のフランス芸術』展は、この芸術史上きわめて重要な時期に焦点を当てたものである。


 百年戦争中の1420年代から、フランス王国は政治的にも芸術的にも大きな変化を遂げた。イングランドとブルゴーニュに占領された王国北部では、芸術の拠点が数多く誕生した。


 王太子シャルルが、特にジャンヌ・ダルクのおかげで王位を回復し、王国を取り戻したときに再興の条件は整った。ジャック・クールのような主要な後援者が、新しい世代の芸術家たちを呼び寄せた。


 これらの芸術家たちは、特にヤン・ファン・エイク(Jan van Eyck)によって花開いたアルス・ノヴァとして知られるフランドル派の写実主義を取り入れる一方、イタリアの影響を受けて、フィリッポ・ブルネレスキ(Filippo Brunelleschi)、ドナテッロ(Donatello)、ジョヴァンニ・ベッリーニ(Giovanni Bellini)といった芸術家たちが発展させた古代の遺産に傾倒した。


 芸術創造は国際的なゴシック様式から徐々に脱却し、ルネサンスの始まりである現実的な新しいビジョンへ向かっていった。


 最初のセクションで歴史的背景を説明した後、展示会では、主要な地理的位置における芸術の多様性を示し、しばしば主要な後援者に関連している。


 3つ目のセクションでは、ブルゴーニュ・フランドル派のアルス・ノーヴァ(ars nova、新芸術)とイタリアのイノベーション(innovation、革新)の中間に位置するフランスの芸術の特殊性について探っていく。

 また、南方のプロヴァンスと、画家バーテルミー・デック(Barthélemy d’Eyck)を含む北方芸術の後援者で紹介者だったルネ・ダンジューの役割について、重要なセクションが割かれている。


 本展では、シャルル七世の治世下における芸術の多様性を紹介する。

 名高い彩色写本、絵画、彫刻、金銀細工、ステンドグラス、タペストリーなどが一堂に会する。コレクションには、シャルル七世の天蓋(ルーヴル美術館所蔵)、ロアン大紀行の写本(フランス国立図書館所蔵)、ルネ・ダンジュー公爵に仕えた画家で『トーナメントの本(Livre des tournois)』を彩色したバーテルミー・デックの『エクス(エクス=アン=プロヴァンス)の受胎告知』(フランス国立図書館所蔵)など、貴重な作品も含まれる。


 また、アンドレ・ディプレ(André d’Ypres)による『キリストの受難と復活』を描いたパリの三連画(ルーヴル美術館、ゲティ美術館、ファーブル美術館所蔵)の全貌を初めて再現する。


 最後に、15世紀フランスでもっとも偉大な画家の一人、ジャン・フーケ(Jean Fouquet)のコーナーが設けられる。天才的な光彩画家であるフーケは、本展で大きく取り上げられるシャルル七世の有名な肖像画(ルーヴル美術館所蔵)を手がけた。

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 ようするに、「シャルル七世の快楽(plaisir)」とは、時代を先取りしたルネサンスだったということだ。


 国民に重税を課して芸術に散財していたなら文句の一つも言いたくなるが、ミシュレ著『フランス史』によると、シャルル七世統治下の税金はブルゴーニュ公の半分くらいだとか。国土を奪還して平和を取り戻し、長き百年戦争を集結させて、司法と税制を整えた。

 国王として最大限の成果を上げているのだから、文句のつけようがない。


 むしろ私は、私生活の充実した趣味人ぶりを知れてよかったと思う。


 激動の時代に生まれて、苦悩の果てに勝利する——カタルシスを得るのは素晴らしいが、同時に「推し」にはやはり幸せでいてほしいからだ。








(※)最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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▼『歴史家たちのポジショントーク:矛盾だらけのシャルル七世』タイトルページ:https://kakuyomu.jp/works/16818093075033117831




(※)もし、本作をきっかけにシャルル七世に興味を持った方がいらっしゃるなら……、当方のメインコンテンツで取り扱っています。


▼『7番目のシャルル、狂った王国にうまれて』【少年期編完結】

https://kakuyomu.jp/works/16816927859447599614


▼『7番目のシャルル、聖女と亡霊の声』【青年期編】

https://kakuyomu.jp/works/16816927859769740766




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歴史家たちのポジショントーク:暗君か名君か、矛盾だらけのシャルル七世 しんの(C.Clarté) @shinno3

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