凍露は落ちる。そして花はそれを受け、やがて春を芽吹かせる。

冒頭五行で涙しました。
そのまま読み進め、ぐうっと苦しい私の胸は、老人と共に座った公園の、古ぼけたベンチに共に重なり、しゃり、と霜で音を立てそうな黒い土を踏みしめました。

語り口調こそ違いますが、この筆致の中に浮かび上がったのは宮沢賢治でした。

孤独さの中にも、自然の摂理を受け入れ、そしてその自然が、悔しいほどに美しい。

幸せな終わりなどないのではないかと、私もそう考えたことはある。

ただ、冬の中にいるから、凍露の美しさと刹那さに、想いを馳せることが叶うのだと、老人が自認している様が堪らなく狂おしい。

抱きしめて命が尽きるのを祝福できるなら、私はあなたの大地になりたい。

そんなことを、感じてしまいました。
ありがとうございました。