第4話 プロローグ④

「話をまとめるとだな…」

4人は近くにあった椅子を並べて座った。そして薊の近くには小型の黒板とチョークがあり、それぞれの名前が書かれていた。

「まず、赤羽椿。部活動荒らしで著しく風紀を乱したので罰として掃除当番っと」

慣れた手つきで薊は黒板に書き始めた。

「吉村桜さん。数々の男子生徒だけでなく教師も誘惑したため罰として掃除当番っと」

桜は困ったような顔をしているが、それもまた色っぽいと菘は感じた。

「そして市野菘。本校史上最速で遅刻回数15回を記録したため罰として掃除当番っと」

「すげぇ、どうすりゃそんな遅刻できんだ?」

椿はニコニコした顔で菘を覗き込んだ。

「いやはや、褒められましても恐縮します」

「いや、褒めてないって」

薊はため息をついた。

「そういえば、磯貝さんはどうして掃除当番に?」

桜が微笑みながら呟いた。

「実はだね…ちょいと教師たちを馬鹿にしすぎまして…」

薊はうつむきながら話し始めた。

「たまたま、教師が間違えていたから指摘をしてね。そうしたらみんなが私のところに集まっちゃって質問攻め」

「薊ちゃん、すごいんだね。私なんて質問する内容すら思い浮かばないのに」

もしかすると菘は椿とよい勝負をするかもしれない(頭の出来が)と思う桜であった。

「それで教師が怒っちゃうもんだからつい…ひどいことを言ってしまってね」

「あれだな!教師のくせに間違えやがって!とか教師としてどうなの?みたいな!」

「ちょっと、椿ちゃん。そんな煽り方、私ですらしないよ」

黙り込む薊。場の空気がひんやりとしてきた。

「どうやら磯貝さんはそういうことを言ったみたい。噂には聞いていたけど」

桜がふふっと微笑みながら付け加えた。

「私も似たような感じだな。私より下手な奴を煽りまくった結果、ほぼすべての部活を出禁だから」

誇らしげに話す椿を見て、薊はぼそぼそと何か呟いている。

「私だって別に何かしたわけじゃないわよ。告白されるから断った、その回数が人よりちょっと多かったくらいよ」

桜は逆に罪悪感のない様子であった。

「桜さんのうわさも聞いてるよ。入学式に10人から告白、それもみんな一列に並んで待っていたそうだ」

元気を取り戻したかもしれない薊が、眼鏡をくいっとあげて言った。

「市野さんも知ってるわ。担任の先生が1年に遅刻常習犯がいるって言ってたもの」

「いやはや、恐縮です」

「褒めてないっての。全く、どうしてこうもポンコツばっかりそろって掃除なのよ…」

薊は頭を抱えた。誰かがまとめる役割なんだろうと思うが、運動バカ、フェロモンバカ、遅刻バカをどうまとめればいいのか。


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