第6話 市野菘の場合ー天使と悪魔の財布①

よく、人間の心には天使と悪魔が住んでいてお互いの主義や主張を心の持ち主に訴えかけるという。

天使が善行を勧め、悪魔は悪行を勧める。実際問題、どっちの行いが善で悪なのか判断は主観的なものにもよるだろう。

例えば、善い行いをしても必ずしもそれが褒められるわけではない。世の中にはそれらを偽善だなんていう人もいる。善行を偽りのものとして受け取り、自身の名声に利用したとはどんな解釈なのだろう。やらぬ善よりやる偽善なんていう言葉もあるくらいだから、自分が善行だと思うものは積極的にすればいいのかもしれない。

一方で悪行も時として認められることもある。必要悪だなんて言葉があるように、時として悪は必要なピースの一つになり得る。悪は正しくない。けれど、悪が全くなければ警察は職を失うし、裁判だって起きない。争いがなくなる、平和になるんだなんて考える人もいるが、争いは悪あってのものではなく、正義と正義の、主義と主義のぶつかり合いなのだからなくならない。たまたま、その手法がルール違反だから人権違反、道徳に沿っていないから悪なのである。

と、天使と悪魔の話からとんでもない方向へ話が向いてしまった。

さて、気を取り直して本日のお話。メインは市野菘でございます。高校史上最速の遅刻魔こと菘さん。どうやら朝から浮かない様子です。はてさて、いったい何があったのか。少しばかり、彼女の日常をのぞいてみましょう。

え?私?私はしがない語り手ですよ。きっと、どこにでもいる、そしてあなたの隣にもいるはずのね。

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