第5話 プロローグ⑤

「あのさ、掃除の件なんだけど」

薊は意を決して立ち上がった。

「ちょっと待った!私、お菓子あるけど食べる?」

待ったをかけたのは菘だった。

「頂き物の紅茶の茶葉もあるけど、一緒に淹れる?」

便乗したのは桜。

「じゃあ手っ取り早くお茶会の準備するぞ!」

机といすを動かし始める椿。

「待った!お茶会するのはまぁ、いいけど先に片付けてしまおう。見たところ、ひどいのは埃だからな、それさえどうにかしてしまえば何とでもなる」

薊は続ける。

「こんな埃だらけの教室だとお菓子にも紅茶にも埃がついてしまう。優雅なお茶を楽しむなら、それなりの準備をすれば格段によくなるってことよ」

薊の発言に3人は顔を見合わせた。

「さすが天才だ!よっしゃ!掃除だ掃除だ!」

「じゃあ、私は雑巾の用意を!」

うーん、服が汚れるのは嫌だけど、こんなところでお茶するのはもっと嫌かも」

薊は見事にこの珍獣もとい3バカを誘導して見せた(と言うより、正論を言っただけだが)。

それなりに掃除を終えたころには、下校時刻となっていた。この学校は6時になるとゆうやけこやけが流れて放送部とおぼしき生徒の「下校時間です」の案内が入る。

「とりあえず、お茶会は明日になるかな」

薊はゴミ袋の口をしばると汗をぬぐった。

「よく考えるとポットもカップもないもの。明日、家から持ってこようかしら」

埃まみれのスカートをはたきながら桜がこたえた。

「じゃあ、お菓子はこの棚にこっそり隠しておいて…」

菘は鞄から出した箱入りクッキーをそっとしまった。

「なぁ、なんかここ私たちの秘密基地みたいじゃない?」

椿は素っ頓狂なことを言っていた。

「放課後にこっそりあつまってくだらない話をグダグダとする、なんか青春ぽくない?」

「私は勉強があるからな」

薊は椿の提案を一刀両断した。

「けど、薊ちゃん。息抜きだって必要だよ?」

「そうそう、勉強ばっかりだと息が詰まるし」

菘と桜はどうやら椿の提案に乗るつもりだ。

「まぁまぁ、薊さんよ」

椿は薊と肩を組んだ。

「細かいことは今後の相談ってことで。この活動のブレーンにはいてもらわなきゃ」

「ブレーン…つまり私がトップということ…」

「よっ、大統領!そうと決まればみんな連絡先交換しようぜ」

連絡先を交換し、4人は学校を出た。

家に帰った菘はスマホのSNSを見た。

「グダランティーヌ…?」

4人のグループチャット名、グダランティーヌ。一体由来は何だろう。名付け親は…薊ちゃんかな?

そんな想像をしていると、どこからか薊の声で「違うわ!」と聞こえた気がした。

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