アッシュとナタリー~旅立ち~

教会まで移動するのには、馬車を使うのかと思ったが、『移動魔法』というものを使うらしかった。


魔法使いの1人が、魔法使い一行とアッシュ、ナタリーを囲むようにして杖で地面に魔方陣のようなものを書いた。


そうすると、魔方陣が光始め、一瞬宙に浮いたような感覚があったかと思うと、気づいたときには教会前に戻っていた。


ナタリーは驚き、そして初めて目の当たりにした魔法に感動した。


「魔法ってすごい。。。」


それしか言葉が出てこなかった。


教会に戻ると、シスター達に泣きながら抱き締められ、部屋でゆっくり休むように言われた。


アッシュは、魔法使いと、シスター長に別室へ連れていかれた。きっと特別な話があるのだろう。


ナタリーは、アッシュは今度こそこっぴどく叱られればいいと思った。とにかく、2人とも無事だったことに安堵し、疲労からか、泥のように眠った。





ナタリーは、扉のノックの音で目が覚めた。


翌日の午前中まで寝ていたようだ。

シスターが顔を出し、


「ナタリー、身支度と着替えを済ませて、シスター長の部屋まで来なさい。」


と言われた。もしかしたら、昨日のことで自分も怒られるのだろうか。。。とドキドキした。


部屋に入ると、長髪の魔法使い1人と、シスター長、アッシュがいた。


なにやら緊張感が漂っており、ナタリーは不安になった。


シスター長が言った。


「ナタリー、話があるの。アッシュは、昨日のことがきっかけで、魔力が目覚めたの。魔法使いとして中央に行くことになったわ。」


ナタリーは、アッシュがあまりにも異質だとは感じていたが、やはり魔法使いだったのかと妙に納得した。


「それでは、アッシュはここを去るということですか?」


「ええ、そうなるわ。今日発つつもりよ。」


「そうですか。。。そんなに急に。」


ナタリーはなんだか寂しくなった。荒れくれ者のアッシュには迷惑ばかりかけられたが、いざいなくなると思うと、やはり心配が募った。こんな性格で、魔法使いとしてやっていけるのだろうか?


シスター長は言葉を続けた。


「それでなんだけど、」

「ナタリー、あなたにも中央に行ってもらうわ。」


ナタリーは意味が分からず聞き返した。


「・・・はい?私が?」


シスター長は頷いた。


「あの、私には魔力なんてありません。付いていっても、何のお役にも立たないと思います。」


「ええ、あなたには魔力はないけど、魔法使いとして行くのではないのよ。アッシュ1人では心配だから、ナタリーが助けてあげて。アッシュも、あなたについてきて欲しいと言ってるの。」


どういうことだろう。魔法使いになるアッシュを助けるとは。足手まといにしかならないのではないか。侍女としてお世話をしろという意味だろうか。


「アッシュが、そう言ったと。。。」


何もかも疑問しかないが、一番信じられないのは、アッシュが私に付いてきて欲しいと言ったことだった。私のことを、邪険に思っていたくせに、何かの間違いじゃないか。


その時、戸惑うナタリーを見てアッシュが言った。


「ああ、ナタリーと一緒がいい。」


はっきりそう言われたことで、ナタリーは覚悟を決めた。自分は、有無を言わさずアッシュと共に中央(セントラル)へ行かなければならないのだろう。


この時から、ナタリーの人生は、アッシュに握られたも同然になった。

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