アッシュもナタリー~魔力の目覚め~

ナタリーが目覚めると、薄暗くて冷たい地下のような部屋に、手足を縛られた状態で転がされていた。


隣には、アッシュも同じ状態で、気を失っている。


部屋には誰もいなかったため、ナタリーは小声でアッシュを呼んだ。


「アッシュ!起きてアッシュ!!」


何度か呼ぶと、アッシュはゆっくりと目を開けた。


「・・・ここは?」


「分からない。さらわれたんだよ。私達」


ナタリーが涙声で言うと、アッシュは何か考えているような顔をしていた。



途端に扉がバンっと開いて、ナタリーは驚いて「きゃあっ!」と叫んだ。


やせ形で黒い服を着た男2人が立っていた。


「目が覚めたか?」


「坊主にしか用はないんだがな。恨むなよ、お嬢ちゃん」


どうやらアッシュをさらうつもりだったが、たまたまナタリーがついてきたため、2人とも誘拐されてしまったらしい。


(何で私が巻き込まれないといけないの)


ナタリーは泣きたくなったが、ナタリーはアッシュより2つ年上で、しかもお世話係だ。


このような状況下でも、私がアッシュを守らなければならないという責任感を感じていた。


アッシュはほとんど動揺しているように見えなかった。無表情で、じっと男達を見ていた。


「けっ 気味の悪いガキだぜ。」


男達が吐き捨てるように言った。


「・・・なぜ俺をさらった?」


黙っていたアッシュが男達に問うと、


「どうせ死ぬから教えてやるよ。お前は将来、すげえ魔法使い様になるかもしれないんだと。だから、まだ魔力に目覚めてないガキのうちに消してしまおうって、お頭の命令だ。」


男達はそう言うと、アッシュに近づいていき、お腹の辺りを思いっきり蹴りあげた。


アッシュはウッと呻いた。


「俺たちには、お前はただのクソガキにしか見えないけどな!」


「やめてっ!!アッシュに乱暴しないで!!」


ナタリーの叫びは虚しく響いた。


男達2人は、アッシュをなめ回すように上から下まで見たあと、ナタリーを見た。そして顔を見合わせてニヤっとした。


「坊主、よく見りゃきれいな顔してんじゃねぇか。ついでに女もいるしな。ガキだが、楽しむには充分だ。」


男達が情欲にまみれた顔で、アッシュとナタリーの体に触れた。


ナタリーはいよいよ怖くなり、


「お願い!!!触らないで!!!」


と泣き叫んだ。


もうダメだ。この男達にひどいことをされて、私もアッシュも殺されてしまうんだ。。。と思ったその時だった。


ナタリーに触れようとした男の体が中に浮き、そのまま何かの力で後方に吹っ飛ばされた。男は壁に体を叩きつけられそのまま崩れ落ちた。


「なんだ!?!?」


もう1人の男は驚き、アッシュを化け物を見るような目でゆっくり見下ろした。


「まさか、お前」


男が言い終わる前に、いつのまにかナタリーとアッシュを縛っていた縄が解け、アッシュが立ち上がって男を見上げていた。


男は金縛りにあったように動けなくなり、その後、グシャッという何かを握りつぶすような音と共に、目と鼻から血を流して倒れた。


ナタリーは何が起こったのか分からなかったが、男の1人は脳を潰されたのだと思った。


ナタリーは怖くてたまらなかったが、逃げるなら今のうちだと思いアッシュに駆け寄った。


「アッシュ!仲間が来る前にここから逃げよう!!」


アッシュの腕を掴み、開いていたドアから飛び出した。地下からの階段を上がると、外へ出た。


助かった!!と思ったその時、数人の人影がこちらに近付いてくるのが見えた。




彼らは、皆同じ長いローブを着ており、その紋章から、国家魔法使いだということが分かった。


強力な魔法使いは国家中央(セントラル)に集められ、魔力を使いあらゆる方法で国を守るのだ。本で読んだことがある。


ナタリーは魔法使いを見るのは初めてだったが、もしかしたら自分達をさらった男と関係があるのかもしれない。


アッシュをかばうように自分の後ろに隠し、


「私達に何の用ですか?」


と問うた。


長身の、目付きの鋭い男が、アッシュを見て言った。


「魔力が覚醒したようですね。予言は本当だったわけだ。そこの少年の、強力な魔力が発動したため、君達の居場所を特定することができた。私達は、君達を保護しにきました。」


ナタリーはその言葉を聞き、助かった!と安堵し、膝の力が抜け、へなへなと地面に座り込んだ。


言葉をかけようとアッシュを見たが、アッシュは相変わらずの無表情で魔法使い達を見ていた。


魔法使い達に連れられ、ナタリーとアッシュは教会へ戻ることとなった。



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