Dragon knight《ドラゴンナイツ》~竜騎士の不遇な一日~

福山典雅

Dragon knight《ドラゴンナイツ》~竜騎士の不遇な一日~

 親愛なる読者様へ

 こちら短編「Dragon knight《ドラゴンナイツ》~聖女様の竜騎士~(1話読み切り)」の続編となります。 https://kakuyomu.jp/works/16818093073563471668

 こちらも1話読み切りですが、よろしければ先に「Dragon knight《ドラゴンナイツ》~聖女様の竜騎士~」をお読みになられると、さらにお楽しみ頂けるかと思います。

 どうぞ、宜しくお願い致します( ;∀;)







 Dragon knight《ドラゴンナイツ》~竜騎士の不遇な一日~



 俺は竜騎士(仮)のルク17歳。現在、危険な状況から九死に一生を得ていた。


 人生とは何があるかわからない。それでも前向きに一生懸命生きて行きたいと俺は常に思っている。あっ、「真面目か!」とツッコまないで下さい。


「キリキリ歩かんかい! このボケナスがぁああああ!」

「さ、さーせん!!」


 ある事情で死にかけた俺は捕縛され、強面の王都警備隊の衛兵さんに後ろ手と言うか少し特殊な縛られ方をされ、煌びやかな王都の中央通りを、晒し者の犯罪者の如く、すっごく注目を浴びながら連行されている、ううっ、悲しい。


「ママ、あの人どうしたの?」

「はぁ~、うらやま、ううん、だ、駄目よ、見ちゃいけません! 汚らわしい、行くわよ!」

「あっ、ママ、少し顔が赤いよ?」


 俺は現在、マニアックな衛兵さんにより亀〇縛りにされている。なんでだぁあああああ!


 さて、何故こうなったのか、理由は簡単だ。俺が街で買い出しをしている時だった。突然いかつい大勢の冒険者達に囲まれ、「おい、貴様がクレたんの竜騎士ルクって奴か!」と怒鳴られた。


 はた迷惑な話だが、最近こういう事がすごく増えている。俺が聖女様の竜騎士(強制承諾)となってからだ。そこで身の危険を感じた俺は、そそくさと去ろうとした。


「いえ、人違いです。急ぎますんで、じゃ!」

「すっとぼけんじゃねえ、やっちまえ!」


 奴らはいきなりと問答無用で襲って来た。結論がはやいな、おい!


「な、なにすんですかぁああああ!」

「うっさいわぁ! 我らがアイドル、きゃわゆーい聖女様クレたんを独占しやがって、いい気になんなよ、お前!」

「ちょ、離せぇえええええええ!」


 そう、俺が聖女クレハの竜騎士となってから、あいつのファンというおかしな連中達から、こういう風に度々理不尽な襲撃を受けている(涙)。あのアホは外面がいいのか、王都でも「慈愛の聖女様」と呼ばれ大人気であり、マニアからは「クレたん」の愛称で親しまれている。その聖女様の竜騎士となった俺は、それはもう呪いを受けるレベルで(実際受けた)、恨まれまくって日々大変なのである。


「いいざまだぜ! さあ、アニキぃいいいい! やっちゃって下さい!」

「おう! まかせろやぁ、ごらぁ!」


 奴らに羽交い絞めされた俺の目の前に、どよめきと共にアニキと呼ばれるムッキムキの男がずいっと現れた。もうそこには筋肉しかない。これは満場一致で脳筋様確定だが、恐ろしい事に、その脳筋様は身の丈を越える巨大で不穏なバトルアックスを片手で軽々と握り、今にも殺しちゃうぞという空気感を醸し出していた。っていうか、こいつ超有名なS級冒険者【鬼斧】の異名を持つロン・キンクスじゃないか、マジか!


「てめぇは、クレたんを汚した、もはや明日を生きる資格はない! いいか、良く聞け、俺がクエスト報酬で教会の握手券を一体何千枚買ったと思ってんだぁあああ、泣くぞ、ごらぁ!」

「そ、そんなの知るか! アホ!」

「なんだとぉおおお!」


 思わず勢いでツッコんでしまった俺の些細な言葉に対し、S級冒険者ロンは世界を滅ぼさんとする魔王の如く鬼の形相となり、さらに周囲のモブ冒険者達も怒気と殺気を激しく剥き出して来た。ちょ、怖いんですけど! 


「俺達の聖なるイベント【クレたん握手会】が『アホ』だと言うのか! ゆるさん、ゆるさんぞ、貴様!」

「「「こんな奴やっちまって下さい、アニキ!」」」

「おう、任せろ! 本気で行くぞ、燃え上がれ鬼斧! ユニークスキル【極炎千本斧】だぁあああ!」

「「「おおおっ、アニキがマジだぁああ!」」」

「おめぇら、今からこいつの処刑祭りだ! はっはは、地獄の鬼と仲良くしろやぁあああ!」

「「「すげぇええ、アニキ・アニキ・アニキ・アニキ!」」」


 なんかいきなり大技が発動してんですけど、キレッキレだろ、お前! つーかなんだよ、処刑祭りって!


 ちなみに、ユニークスキル【極炎千本斧】とは、かつて王都周辺を襲った凶悪なワイバーンの群れ千体を瞬く間に屠り、奴をS級冒険者にのし上げた凶悪で火力最大のユニークスキルだ。今まさに青紫に燃え上がる極炎を纏った無数の斧が、俺を切り刻もうと天空に舞った。というかはしゃいでる奴ら、お前らも全員やばいんだぞ! 


 だが、どうする、俺! 


 そう思った瞬間だった。雷鳴の様に俺の脳髄に条件反射の如く、我が家の家訓が強烈に思い出された。


【やる時はやれ(殺れ)! 負けたら死にたくなるまでけつバットだぞぉ♡ 子育てを頑張る可愛く健気な母より】


 俺の精神と記憶に、絶望と恐怖のトラウマを叩き込んだ母さんの決めた家訓!


 い、いやだぁあああああ!


 ここで負けたらあの鬼けつバット地獄が俺を待っている! 


 鮮烈に駆け抜ける負の記憶。もう俺に残された選択肢は二つしかない。この騒ぎを知った母さんから夜も眠らせてもらえずに鬼けつバットされ続けるか、それとも死地に活路を見出し、なんとしてでも勝利をもぎ取るかだ!


「ちっきしょおおお、やってやんよぉおおお!」


 もはや俺の中の理性は死んだ。前後不覚にトラウマの恐怖に支配された俺は、生存本能が強く命ずるままに、燃え滾る炎の様な闘争心の塊となった。すぐさま速攻で全身を魔力で強化すると、奴らの拘束を「むん!」と振りほどいた。


「いやだぁあああああ!」

 ドン!


 刹那、土煙と残像だけを残し爆速で移動した俺は、技の発動直後で油断していたS級冒険者ロンの腹に、全力で拳を叩き込んだ。魔術強化された俺の渾身の一撃は奴の鉄の様な腹筋を凌駕し、メリメリと深く食い込む。


「ぐはっああああ! て、てめぇ!」

「お前に、けつバットの恐ろしがわかるかぁあああ!」

「ちょ、何言ってんですかあああ!」


 直後、俺は爆風を巻き起こす勢いで素早く身体を一回転ひねり、「あたぁあ!」と豪快な回し蹴りを奴のこめかみに叩き込み、「あべしっ!」という断末魔の叫びと共に、S級冒険者ロンをど派手にぶっ飛ばした。


 周辺の輩冒険者達がどよめき叫ぶが、俺はもう止まらない。


「「「ア、アニキィいいいいいいいいいい!」」」

「まとめてかかってこいや、てめぇら!」


 完全に鬼けつバットの恐怖で逆上した俺は仁王立ちし、猛々しく怒り狂う獣の様に吠えた。鬼を喰らう羅刹として俺は生き残るんだ!


「「「ぶっ殺してやるぅうううううう!」」」」

「けつバットぉおおおおお!」


 前後不覚な魂のセリフを叫び、気がつけば数十人が入り乱れての、もうぐっちゃぐちゃの大乱闘が始まった。


 だがしかし、瞬く間に二十人程叩きのめした所で、俺は自分が虚弱体質だった事を思い出した。俺は苦労性だ、普段は明るく朗らかだが、実は不遇な人生を送っている(涙)。この体には魔力量が極僅かしかない。当然、この様に全力で戦えば数秒で魔力枯渇を起こし、再起不能となる。


「あふっ、ちょ、タンマ!」

「「「知るか、ごらぁ! いきなり弱りやがったな、やっちまえぇええ」」」

「ま、まってくりゃはい! ひぃいいいいいいいい!」


 泣き叫ぶ俺は無残にも容赦なくボコボコにされマジで死にそうになった。


 そこに騒ぎを聞きつけた王都警備隊の衛兵さん達が現れて、俺はなんとか九死に一生を得たわけだ。ふぅ~、助かった。


 だがしかし、衛兵隊の隊長が【聖女クレたん親衛隊】の隊長も兼任(笑)しており、しかもS級冒険者ロンの親友であった。ゆえに奴らはずぶずぶ上等に無罪放免となり、俺だけが捕縛され強制連行されてしまった。酷くない?




 さて、無情にも連行された俺は、取り調べもテキトーに王都警備隊に設置された【重犯罪者専用】隔離留置所に速攻で叩き込まれた。ここは薄暗くおどろおどろしい雰囲気で、床はぬめりと湿り、壁には無数の血塗られたもがく様な爪痕が幾つも刻まれていた。もしかして、ここって拷問部屋じゃない?


「おう、今晩はお泊りだな、ぎへへへへ」

「ちょ、なんすか、その気色悪い笑顔は!」

「なに、気にするな、ぐへへへへ」

「あっ、うそ、ちょ、ちょ、ちょとおおおおおおおおおお!」


 何故か俺は亀〇縛りのまま、牢屋の中でエビぞりにされ吊るされてしまった。しかもあのマニアックな衛兵の顔、一体今晩何が! もしや、あんな事やこんな事をされてしまうのか、違う意味で絶体絶命じゃないですか!。


 その瞬間だった。


 突如、留置所の扉が力強く押し開かれ、眩い光の中から何者かが勢いよく中に飛び込んで来た。


「ルク――――――――ッ! 乱闘したって聞いたけど、大丈夫!? ……って、なにこれ、やだぁ、面白ーい!」


 心配したのは一瞬、目の前に現れた聖女クレハは、俺を見るなりそれはもう無邪気にも大喜びした。しかもみっともなく吊るされた俺を、「つんつん、えへへへ」と楽しそうにいじり出す始末だ。


「ぐはぁあああ、くすぐったいから、や、やめろぉおおお! おい、クレハ、いいから、早く降ろしてくれ! つーか、聖女のお前の特権で俺をすぐに釈放してくれよ、な、頼むからさ!」

「えーっ⤵ やだ! ふふん、いいか、良く聞け、無様な負け犬よ。お前は一生私のおもちゃになるのだ、悔しいか、このゴミ虫め、おほほほほほほほ!」

「お前は、どっかの悪徳令嬢か! って、や、やめれって、そこ、つつくなぁああああ!」


 すると、すぐ側にいた監視役の女騎士団長ノルンが素早く挙手をした。なぜ、笑っている?


「ルク殿ぉおおおおおお! わたしは猛烈に感動してますぞおお! このうらぶれた不潔そうな牢獄、湿った空気、薄暗い部屋、そしてそのお姿! もうデリシャスです! ささっ、今宵は大いに楽しみましょう、はっははははははは!」

「変な高笑いしてんじゃねぇ! 頼むからさぁ、釈放の手続きしろよぉおお! お前、何、お泊りセットとか出してんの、泊まる気かぁああ!」


 そして最後に原種古竜、現在ヒトガタ眼鏡っ子で地味子のアウレリーナが一言。


「ふしだらです、めっ!」

「――――は、はい、さーせん(意気消沈)!」


 そして、そのまま三人は、先程の怪しい衛兵さんを交えて、何やらひそひそとミーティングを始め、時折「ぐへへへへ」、「うひひひひ」、「きょきょきょきょ」と変な笑い声をあげていた。な、何、する気なんですか、君達!


「お、おい、変な顔で変な声で、怪し気に話さないでぇええええ!」


 俺の絶叫が留置所に虚しくこだました。

 追伸、俺は苦労性な人生でも常に頑張ろうと思っている(涙)。




 Dragon knight《ドラゴンナイツ》~竜騎士の不遇な一日~ FIN


 to be continued? 

 するのかな……しなかったら、すいません( ;∀;)


























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