おまけ
翌朝
「はっ、はっ、はっくしょーん!!」
食堂へ向かう廊下で僕は大きなくしゃみをした。鼻声で喉が少しばかりイガイガする。
「何だよ、風邪っぴきか?伝染さないでくれよな」
今泉が大げさに僕から離れる。
と、背後から明るい声がした。
「今泉さん、三上さん、おっはよーございまーす!」
「おぉ、橋本ちゃん、おっはよー!今日も可愛いね」
「そんな朝から営業トークしなくていいですよぉ。それより三上さんは風邪でもひいたんですか?」
心配そうな顔で僕を覗き込む。
「大丈夫大丈夫。ちょっと喉が痛いだけだから」
「そうですか?お大事にしてくださいね」
「うん、ありがとう」
と、その時背後で「くしょん!」小さなくしゃみが聞こえた。
振り向くと京子さんだった。
「あらら、京子さんも風邪ですか?」
「ちょっと喉がイガイガしちゃって」
「そうですかそうですか」
橋本ちゃんは何かを言いたそうに僕の顔を見てニヤニヤしている。
「三上さん、おはようございます」
京子さんは何も知らずに僕に微笑んだ。
「あ、京子さ、いや、上山さん、おはようございますっ」
いつもの癖と恥ずかしさから僕は言い直してしまった。
京子さんはちょっと頬を膨らませ、そして「うふふ」と笑った。
そんなふたりを見て橋本ちゃんはますますニヤニヤしている。
僕らの恋は三歩進んで二歩下がるようにゆっくりゆっくり進んでゆく。
今日もいい日になりそうだ。
こんな魔法のような夜に きひら◇もとむ @write-up-your-fire
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