🎼2話🎼 始まりの旋律②
富士山、比較的大きな建物が多い静岡の街、浜名湖などを抜け、定刻通り新幹線は新大阪駅に着く。ここで一度乗り換えである。次の新幹線の出発までに十分あるので、時間的にもホームの駅弁屋で駅弁とお茶とお菓子を買い、新幹線に乗り込んだ。蒼空は、出発してすぐ駅弁にありついた。そのあとはお菓子をつまみながら適当に本を読み、睡魔が襲ってくると仮眠をとった。
鹿児島中央駅へ降り立つ。
「暑っ」
降り立った瞬間に蒼空の口からそう声が漏れた。鹿児島は東京よりも南というのもあり、当たり前のことである。蒼空は前にバンドのライブの仕事で熊本に行ったことがあり、気候は熊本と同じくらいだろうと予想していたのだが、全然違うことに驚いたのだった。
(熊本より全然暑いんだな…)
改札を抜け、タクシー乗り場からタクシーに乗る。運転手さんに母親から教えられた目的地を伝える。
「路面電車の白砂三丁目駅までお願いできますか」
「白砂島かい? 行けるけど、結構お金かかるよ」
「大丈夫です。お願いします」
タクシーは街中を抜け、やがて海の上を走る大きな橋にかかる。どうやらこの橋を渡り切った先に見える島が目的地の白砂島のようだ。若干傾きかけた太陽の光が鹿児島の海に照り付け、反射する景色に思わず声が漏れる。
「綺麗…」
「お客さん、鹿児島は初めてかい? ずいぶんお若いしかっこいいようで」
見た目的にベテランぽい運転手さんに聞かれる。
「はい。高二です。夏の間だけ母親の友達が住んでいる白砂島に滞在することになりまして」
「そうでしたか。白砂は鹿児島の中でも海も景色もきれいな所ですし、楽しんでいってくださいな」
「もちろんです」
そんな会話をしているうちに、路面電車の駅らしい建物の横でタクシーは止まった。料金を支払い、フレンドリーな運転手さんにお礼を告げて降りる。
(さて…このあたりに同い年くらいの男の子がいるはずなんだけどな)
蒼空は周りを見渡す。
「もしかして、君が蒼空くん?」
すぐに背後から男の子の声がした。
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