🎼8話🎼 いよいよクラスメイトと対面

 「蒼空くん、お待たせした。教室に行こうか」


 しばらくして、朝礼の始まる鐘の音と共に、高橋先生が職員室から出てくる。


「はい」


 鞄に本をしまって、立ち上がる。


「蒼空くんは音楽が好きだと聞いているが、読書も好きなのかい? 今どき、待ち時間に読書をする子がいるなんて驚いたよ」

「あー。音楽は昔から大好きです、特に合奏ですかね。読書は趣味です。気分転換になるんですよ」

「へー。ワイもこう見えて読書が好きでね。学生の時も現代文と古文、そしてご想像の通り体育の成績だけは良かったよ」

「なるほど」


 そんな会話をしているうちに、2年B組の教室の前に着く。


「じゃあ、ワイが呼びに来るまでちょっとだけ待っててな」


 そういって、高橋先生は教室のドアを開けて大きな声で挨拶をする。


「みんな、おはよう!」

「おはようございまーす」


 案外にも、しっかりと生徒から大きな挨拶が帰ってきて驚く。こういう暑苦しいのはい嫌いな人が多いイメージだったからだ。


「今日は、ホームルームを始める前に一時的にこのクラスで一緒に勉強することになった子を紹介したい、蒼空くん、入ってきて」


 外にいてもしっかりと高橋先生の声が聞こえる。


 (本当に高橋先生の声はよく通るなぁー)


 なんてことを思いながら、蒼空は前の扉を開けて、教室に入る。どうやら、蒼空という存在がいることは既に知っているようで、主に女子たちの「イケメンが来るらしいよ」「え、嘘。超楽しみ」とかそんな声が聞こえてくる。それを横目に、蒼空は教卓の横に立って教室を一望する。


「はじめまして、東京から来ました。石神蒼空といいます。以前はバンドをやっていましたが、訳あって、ここに来ました。一先ず夏の間だけですが、よろしくお願いします」


 こういうのはファーストインスピレーションが大事だということは、バンドを始めたころから知っていたので、なるべくいろんな生徒の顔を見て話す……のだが、何故か一部の生徒と目が合うと、すぐに顔をそらされてしまう。決まってそれは女子だった。


『パチパチパチパチ』


「じゃあ、蒼空くんは亮の後ろのその空いている席に座ってくれ」

「はい」


 窓際の後ろから二番目。亮の近くにしてくれた高橋先生の配慮に感謝しつつ、そこへ向かう。


「よろしく」


 とりあえず、席が近いクラスメイトには、これから先なにかと厄介になるかもしれないので、改めて感じよく挨拶をしておく。


「きゃぁー」


 そしてまた、その中の2、3人の女子が悲鳴を上げ、顔を真っ赤にして俯く。


「おいおい、蒼空さんや、初っ端から女たらしになるつもりか?」


亮はそう言って、半ば呆れたような顔をしていたのだった。


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メ♩ト ♫ ロ ♬ ノ 🎼 ー ੭: ム (仮) 凪村師文  @Naotaro_1024

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