🎼5話🎼 親父、襲来

 すっかり日も暮れたころ、亮に呼ばれて下の座敷部屋に行くと、ガタイの良い男の人が座っていた。


「ああ。そういえば……父ちゃん、今日からしばらくホームステイする子」

男の人は、野球中継から視線をこちらに向ける。

「はじめましてお父様。お世話になります。石神蒼空です」

「おーーー。キミが噂の。かっこいい子だなぁ。よろしく。俺のことは親父とでも呼んでくれ」


 思ったよりも大きな声で、親父さんは右手を差し出す。それに応えて握手を交わした。


「にしてもよくこんなとこに来る気になったなぁ」

「はい……。東京で色々とあって」

「……そうかい。俺も昔は東京でバリバリ働いていた時もあったけど、あそこは騒がしくて仕方ねぇ。だからこうして東京で出会った香蓮を無理やり連れてここに来たんだよなぁ」

「そうだったんですか」


 そんな話をしていると、香蓮さんが魚ののったお皿を持ってきて晩御飯ができたことを伝えた。蒼空は自分がここに来た理由を恐らくあえて追及してこなかった親父様に感謝しつつ、席についた。


「いただきます」


 あまり詳しくはない故に名前は分からない白身魚の塩焼きみたいなのを食べる。


「やばい……おいしい」


 思わず口から出てしまう。


「あら本当? 嬉しいわぁ。よかったわねあなた」


 香蓮さんが嬉しそうに言う。どうやら親父さんは漁師さんらしい。そしてこの魚は親父さんが釣ったようだ。


「おう。いっぱい食え」


「そういえば、早速明日から学校だね」


 そう香蓮さんが言い出す。


「はい。楽しみです」

「そういや学校どうするんだ? そんな簡単に高校って入れるのか?」


 亮が聞いてくる。


「えっと、前いた高校は高一の終わりに退学して、今はどこの高校にも通っていないんだ。で、ここに来ることになって、ちょっと前にオンラインで亮の通う高校の面接受けて、プロデビュー目前のバンドチームに所属してましたって話したら特待生合格? みたいなのもらったよ」

「えっ。じゃあ一緒の高校に通うのか。てか特待生合格って……やばいなそれ」

「あはは。まぁね」

「じゃあ明日は一緒に登校するか。学校の場所わからないだろ?」

「うん。助かる」

「でも教材とか制服は?」

「それなら明日担任の先生からもらえるみたいよ。教材は夏の間だけの短期留学扱いみたいだからコビーしたものみたいだけど」

「わかりました。ありがとうございます」


 そんな話をしながら、しばらく晩御飯を楽しんだのだった。



 

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