🎼6話🎼 クセの強い先生

 翌朝。


「おーい、蒼空ぁ。準備できたかぁ」


 玄関から亮に呼ばれて、慌てて昨日あらかじめ用意していた荷物の最終確認をして、部屋をでて、階段を駆け下りる。


「あー。蒼空くん待ってぇー」


 キッチンから香蓮さんの声が聞こえて、思わず立ち止まる。香蓮さんは手に何か持って蒼空の前へ現れた。


「はいこれ、お弁当」

「えっ。良いんですか」

「うん。持って行ってくれると嬉しいかな」

「ありがとうございます。いただきます」

「うん! 行ってらっしゃい、蒼空くん。亮も」

「あいよ」

「行ってきます、香蓮さん」


 家を出てすぐ近くの横断歩道を渡って、海側の歩道を亮と並んで歩く。


「ただでさえ転校で目立つのに、さらに一人だけ私服って……」

「ははっ。まぁそれは仕方ねぇーな」

「無駄に目立っちゃいそう」

「いや、それ以前に、そんな綺麗な顔していたら絶対目立つだろ」


 亮から謎の突っ込みを受ける。


「ん? どういうことだそれ」

「はっ、おい蒼空。自分がどんだけイケメンか自覚してねぇーのか」

「あー。まぁ確かに、他の人と比べたら自分の顔が整っているのは何となく分かっているつもりだけど、今までそういうことあんまり気にしてなかったからなぁ」

「なんだそれ、嫌みか」


 笑いながら亮に言われてしまう。朝日を反射して、亮の笑った顔がさらに輝いて見えた。


「ところで、担任の先生って、どんな感じの人なの?」

「あー。簡単に言えば、変わってるっていうか。まぁ、覚悟しとけ。蒼空の想像の二倍はやばい先生だぞ」

「え。大丈夫なのかなその先生」

「でも、根はすごい真面目で、やさしくて、オレたちをしっかり見守ってくれてるんだろうなぁーとは思うよいつも」

「へぇ」


 やがて学校も近づいてきたのか、ちらほら亮と同じ服を着た生徒たちが集まり始めた。そして、決まってみんなこちらを伺っている。特に女子からの視線が多い。


「ははっ。早速目立ってまっせ、蒼空さんや」

「だな」


 校門を初めて通り、昇降口でとりあえず来賓用のスリッパに履き替える。


「職員室はこっちな」


 目の前を横に広がる廊下を左に入り、すこし進んだところに職員室はあった。


「「失礼しまーす」」


 二人して挨拶をして、職員室に入る。ぱっと見た感じ、男の先生と女の先生が半々といったところか。そして一人、抜きんでて体が大きい(鍛えられている)先生がいた。まぁあの先生が担任なんて数奇なこと、起こるはz……。


「高橋先生」


 ……亮が呼んだ先生はまさかのその大きな人だった。


「おう、亮か。……それと、おお、君が転入生の蒼空くんか」

「あ、はい。石神蒼空です。よろしくおねがいします」

「おう、ワイは2年B組の担任の高橋洋司だ。体育教員もしている。よろしくな。あ、そうだ、渡すものがあるんだ。ちょっと待っててな」


 そう言って、高橋先生はその大きな体を揺らして、職員室の隣の部屋へ入っていった。


「高橋先生の一人称って、”ワイ”なんだな」

「そうだよ」

「なんだか、クセの強そうな先生だな」


(まぁ、ああいう先生も嫌いではないし……)


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