🎼3話🎼 初めてのトモダチ

 日焼けした肌が印象的な活発そうなかっこいい男の子がそこにいた。

「はい……そうですが」

「ふーん。めちゃくちゃ顔綺麗だなぁ」

近くで顔を顔を覗かれて、蒼空は思わず一歩後ずさる。


「あぁ。いきなりごめん。自己紹介がまだだったね。僕は新納亮にいの りょうだ。同い年だし、タメ口でいいよね。歓迎するよ。えーと蒼空くん」

爽やかな笑顔で手を差し伸べられる。

「蒼空でいいよ。こちらこそよろしく亮」

握手を交わす。


「おう。じゃあとりあえずオレんち行くか」

そう言ってマイペースに歩き出した。慌てて蒼空もスーツケースを引いてついていく。


 「んにしても、なんで東京からこんなど田舎に来たんだ?」

「あーえっと、東京で音楽関係の仕事してた時にいろいろトラブルがあって、疲れちゃって。そしたら母さんがここに行ってリフレッシュしてこいって」

「ふーん。訳アリってやつか。どうりでイケメンなわけだ」

(……深く聞いてこないでくれて助かる)

と蒼空は心の中で思った。このことはあまり話したくないことなのだ。


「まぁなんにせよ、ここは東京なんかと比べ物にならないくらい静かな場所だろうし、すぐに気に入ると思うよ」

「ああ。もうすでに気に入ってたりするかも」

「おっ。マジか。いいねぇその調子で白砂島大好きマンになちゃえ~」


初めて話す相手だけれども、こんなにいきなりラフに話せていることに蒼空は内心驚いていた。いきなりクビを言い渡された一件から、人間不信になりかけていたこともあり、がちがちになるかと思っていたのだが。


二人の歩く道は海沿いを走り、路面電車が時より横を通り過ぎていく。

「綺麗な海だろ? オレの中でこの島のベストポイントだと思ってる」

「うん。さっき鹿児島からの橋を通った時からずっと目が離せないや」

「だよなぁ」


やがて信号のある交差点で大通りを右に逸れ、二件目の家に二人は入った。

「ただいまぁ」

「お邪魔します」

「靴は適当にそこらへんに並べておいて」


玄関に上がると奥の部屋から若い女の人が顔を出す。

「来たわね。いらっしゃい蒼空くん。わたしはそこの亮の母の香蓮です。詩帆から蒼空君のことは聞いてるわ。夏の間だけだけど、よろしくね」

詩帆とは蒼空の母のことだ。

「はい。お邪魔します。しばらくの間お世話になります。よろしくお願いします。あとこれ。母から東京のお土産です」

「あらあら。これはご丁寧に。ありがたく受け取るわ。そんなに堅くならなくていいのよ。私のことも好きに呼んでちょうだい」

「はい。ありがとうございます」


「蒼空の部屋はこっち。荷物持って早く来い~」

階段の途中から亮がそう言う。

「あらあらもうそんなに仲良くなったの?」

「うん今行く」

微笑む香蓮さんに一度頭を下げてからスーツケースをもって階段を上がる。


「蒼空の部屋はここな」

二階には三部屋が並んでいて、亮は真ん中の扉を開けた。

「昨日掃除したから綺麗だと思うけど、まぁ好きに使ってくれ」

六畳くらいの部屋に敷布団とちゃぶ台が置かれていて、いかにも田舎風の良い部屋だった。

「ありがとう」

「おう。んでこれからどうする? 夕飯まで時間あるけど」

「あー。荷物ばらしたり母さんに電話とかしなきゃだから今日はもうここにいるよ」

「おーけー。じゃあなんかあったら呼んでくれ」

「うん。ありがとう」


 



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