本編
「だーるまさんがこーろんだ!」
俺は友成、主に心霊スポットや廃墟に不法侵にゅ…じゃなくてYouTube撮影をしている者だ。
しかし、ネタが思いつかなすぎて企画ボツの覚悟で、とある廃墟(たぶん病院だったとこかな?)で一人、だるまさんが転んだをすることにした。
「だーるまさんがこーろんだ!はあぁぁい!!」
もちろん、後ろを振り返っても誰もいない、当たり前だけど。
俺、一体何してんだろ……。
それでも俺はだるまさんが転んだを言い続ける。
よく心霊ユーチューバーとかが心霊スポットでミッ〇ーのテーマソング歌ってたり、バーベキューしたりしてるのもあるし、過去似たようなのだと、一人かくれんぼなんかも前やったからとりあえず今回は一人だるまさんが転んだをすることにした。
「だるまさんが転んだ!」
予想通り辺りがシーンっとしてるだけで何も起こらない。
まあいい、最悪何も映らなかったとしても廃墟でだるまさんが転んだをするという変人っぷりで再生数が伸びるかもしれないし…。
「だるまさんが転んだ!」
しばらくずーっとずーっと「だるまさんが転んだ!」を繰り返す。
振り返ろうがただ単に暗く静かなだけ、なんの面白味も感じず、なんだかバカバカしくなる。
やっていくにつれ、気づけば窓から陽が差し掛かった。
まあいい、”今日も”ここで寝るか。
俺は一人で”今日も”ここで寝泊まりした。
「だーるまさんがこーろんだ!」
今日もだるまさんが転んだをする。
さすがに何かちょっとでも撮れないと行った損だ。
「だーるまさんがこーろんだ!はあぁぁい!!」
一人でだるまさんが転んだを叫んでいると、誰かが廊下を歩く音がした。
足音の数からして二人だ。
「お、今日こそ何か撮れるかもしれんな」
俺はだるまさんが転んだを続ける、何度も何度も言い続けていると、「キャーッ!!」という悲鳴が上がった。
しかも悲鳴の上がったところがかなり近くだ。
よっしゃ!仕掛けたカメラに何か映ってるかもしれん!
俺は仕掛けたカメラに目を通すが、「キャーッ!!」という声は入っていたが、それ以外は特に何も映っていなかった。
「あー、また”声だけ”かあ~、なかなか幽霊そのものは映らんなあ…」
それからは特に変わったことは起きず、また朝陽が差し掛かった。
「しょうがない、今日はここまでにしよう」
俺は絶対、いい心霊映像が撮れるまで絶対諦めない。
俺は”今日も”ここの廃墟で寝泊まりした。
「ねえここなんか怖いよ、もう帰ろう」
俺の彼女が後ろでビクビクしながらそう言う。
「あいかわらず彩はビビりだなあ、大丈夫だって、何かあれば俺が守るから」
俺は彼女にそう言い宥める。
俺と彼女はここ心霊スポットで有名である廃墟の病院に来ている。
ここは元々ただの廃墟だったが、とある行方不明事件が起きて以来、”男の声”が聴こえるとか、ガサゴソする音がするとか、今じゃ有名心霊スポットのうち一つに数えられている。
「……まさんが……んだ…」
奥の部屋の方から声がした。
後ろに隠れる彼女も聞こえてたみたいで、俺にしがみ付く手を強めて言う。
「ねえ、やっぱ帰ろうよ」
「大丈夫だって、それにまだバズりそうな写真撮れてないし」
俺たちは声のした部屋に近づく、そーっとドアに近づき取手を掴む。
「よ、よし、開けるぞ」
「うう…もうやだあ…」
嫌がる彼女を無視してドアを開ける。
開けると、部屋の中には誰もいない。
「なあんだ、ただの空耳か」
俺は中に入ろうとした、その時。
「だーるまさんがこーろんだ!」
突如誰もいないはずの部屋の中のどこかで男の声が上がった。
突然の出来事に俺は悲鳴を上げながら彼女共々その場から逃げた。
あれから俺たちはどうやって廃墟から出たのか覚えていない、覚えているとすれば、不審な声を聴いてからは怖さのあまり彼女と必死に走って逃げたことくらいだ。
あのときの声は誰の声だったのだろうか、あの声の主がその廃墟を最後に行方不明となった”ユーチューバー”の声だったのか、今の俺にはわからない。
だるまさんが転んだを一人でやってみました。 神町恵 @KamimatiMegumi
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