第5話
ホームが徐々に原型をとどめられなくなってきたようだ。常磐線と同じく溶解していく。アスファルトが凹みだし、透明な煙が節々から上がって来た。天井の窓ガラスも歪曲し、有り得ない方向へとじわじわと割れていく。立っているのもやっとのことなので、私は不思議な力を使った。
「真理! 掴まれ!」
「赤羽さん!」
私は真理の手を掴んで空中へと浮かんだ。
ホームの地面はグスグスと音を発し、崩れだした。
「天空から巨大な何かが降ってきた。辺りは暗黒が支配する……けれども、これは内界で起きた事象で、外界のことではない」
急に目を瞑った真理が意味の解らないことを話し出した。
「デュオ……」
真理が呟いてこちらを振り向く。
「?」
「デュオが呼んでる……デュオが言ったの……さっき話した言葉……」
「内界で起きたことで、外界のことじゃない?」
「そう。これは始原の夜よ……」
「始原の夜?」
「そう……でも、お姉さんの方がもっと詳しいわ。後で二人で話してあげるわね。今はここから逃げないと」
真理はウインクした。
「でも、どうやって? ここはどこなんだ? 上野駅じゃないのか?」
「違うわ。あのね。ここは……上野駅に似たところよ。多分、内界が見せているの。そう、全てを……」
呉林が鼻のところに人差し指を上げて神妙に話した。
「つまり……? 夢の世界?」
「そうよ。でも、違うの」
呉林は下方を見つめた。
ホームのアスファルトはもはや原型をとどめていない。ドロドロとした沼のようになっていた。
これでは、決して降りられない。
降りたら命が無くなる。
窓ガラスが割れている壁から、様々な爬虫類が私たちに向かって這い出てきた。
「片付けてやる!」
私は真理を天井の裏の配管に一時的にぶら下がっているように言った。
「OK。赤羽さん。頑張ってね」
笑顔の呉林だったが、その顔は青味を少し帯びていた。
ウロボロスの世界樹2 始原の夜明け 主道 学 @etoo
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