第4話

 真理は急に随分と肩の力を抜いた。


「そうよ。私たちの手で再び世界を救いましょ。あなたがいれば幾らでも世界は救えるはずよ……。赤羽さん……。あのね、これは夢の氾濫よ。現実が一発で破壊されたのよ。しかも世界中でね……だから、ウロボロスの蛇をまた眠らせないといけない」

「了解!」


 私はやっと動揺を捨て、落ち着きを取り戻した。腕の怪我は夢の世界なので、すでに治っている。


 満点の星空を見て、何故だかロマンチックな気持ちも抱けなくもない。だが、下は鋭い悲鳴や怒号までもが鳴り響いている……。

 

 ここは、やっぱり悪夢の世界なんだな。


 藤代駅が下方に見えて来た。

 その時、鋭利な闇が私と真理目掛けて降って来た。

 私はその一本の線を、なんなく空中で力を使って変容させる。


「ナイス! 赤羽さん! 下も危険だけど、早く降りましょ!」

 元気な真理の声に頷いて、私は藤代駅のホームへと降りた。当然、切符は買っていない……。

 真理が停車している常磐線を見つめ。

「大丈夫よ! この電車は安全よ!」


 嬉しそうに私の肩を叩いて誰もない電車へ乗車した。

 私たちは照明の点いていない真っ暗な車両へ入ると、すぐに扉が閉まった。


 ここから東京の上野駅まで約50分。

 さすがに居眠りはしない方がいいだろう。

 

「このまま乗っていましょ」

 真理は座席に平然と座る。

 もう危険はないだろうと、私も座席へと座った。

「そういえば、ホームもこの電車の中も誰もいない」 

「ええ……」

 真理はコックリと首を私にもたげて寝息を立てた。

「赤羽さん……これから、多分キラーが多く出てくるわ……」

 真理は眠ってしまった。

 どうやらかなり疲れていたのだろう。

 真理は一体? 藤代駅まで何で来たのだろうか?


 考えてもしょうがない。

 私は車窓から夜空を見上げ、一人溜息を吐いていた。


 電車は快速電車だった。普段よりも5分か10分早く着くようだ。

 目的地は今のところ日暮里か上野駅だ。

 デュオはどうしているのだろう? 土浦のヘルユメにはいなかった。旅にでもでてしまったのならもう見つからないのだろう。


 あるいはデュオのことなので、ひょっこりとでて来るかも知れないな。


 常磐線は何事もなく上野駅へと到着した。

 日暮里駅を意図的に避けた真理が、ホームに降り立った後、不可解なことを言って震えだした。


「ここ……上野駅じゃない!」


 暗闇の中。駅のホームは、普通の外観を保っている。

 私は真理に問いかけようとした……だが?!

 突如、幾つものガラス窓が割れ、巨大な爬虫類の姿が窓の外で這い回っていた。


何故かそれは私には巨大な……ワニに見えた。

 

「赤羽さん! ここは危険よ! 多分なんだけど、言いづらいけど……すでに、何かの腹の中よ!」

「え!?」


 後ろを振り向くと、すでに常磐線は溶けだしていた。


「何かの腹の中だって!?」 

「そう、多分大きな爬虫類の腹の中よ!」


 真理の悲鳴のような声が辺りに鳴り響いた。

 私はさっき見た巨大なワニを思い浮かべる。

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