過酷な時代を生き抜いた母の青春に捧げる

戦争の不穏な足音、戦時下の社会の歪みと不条理、そして終戦後の様変わり。この怒涛の時代を生き抜いたひとりの女性──筆者のお母さんの物語です。
とはいえ、身内を描くような湿っぽさが皆無で、とても客観的な語り口なのが印象的です。そのため第三者にも入りやすいです。

大切な青春を過ごすには残酷すぎる戦争下の日本が端的に凝縮され、肌で感じるように克明に描かれています。しかしその過酷な青春を乗り越えたあとには生きることへの賛歌を思わせるラストが用意されていて──
お母さんへの思いと過去のあやまちを繰り返さないための警鐘が詰め込まれた一作。今読むべき作品だと思います。

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