ひりつく、負け続きの生き様。

この作者様の「確率」シリーズを、私が初めて読んだのは「四割・八分・九厘」。
そのときから、淡々とした文章に対し、その中に「生きている」感覚を胸に迫るほど感じさせるものでした。
そして本作、「0割0分0厘」もまた、そういう作品でした。

それはあるいは、私がそれと分からないほど恐ろしく洗練された技巧によるものかもしれません。
目を惹く美しいセンテンスがあるわけでもなく、ケレン味あふれる派手な展開があるわけでもなく、なのに引き込まれて、すとんと入っていく。
「四割・八分・九厘」のレビューでも似たようなことを書きましたが、それはどんな場面でもただ駒をひとつ動かすだけという、将棋指しの所作に似ているのかもしれません。
美しい作品だと、私は思います。